12 3. 交通事故オープンデータ活用の検討結果 本章では、警察庁や都道府県の警察本部が公開した交通事故オープンデータの利活用に向けて検討した結果を整理する。 3-1 乗用車対貨物車衝突事故の空間的分布の把握 3-1節では、交通事故オープンデータの活用方法について、乗用車対貨物車衝突事故の空間的分布の分析結果を報告する。なお、本節は交通事故データのサンプル数を確保するため、福岡県の警察本部が公開した交通事故オープンデータを用いた分析を実施する。該当内容は名古屋大学・三輪富生先生との共同研究成果として、CSIS DAYS 2020(2020年東京大学空間情報科学研究センター年次研究発表大会)に発表したものをもとに整理する11。 3-1-1 目的及び特徴 近年、事故対策の検討や事故発生箇所の周知を図るため、事故原票データのオープン化が進んでいる動きがある。事故原票データから、事故発生箇所を把握することは可能となる。本研究は事故原票データの活用方法を模索するため、日本国で研究蓄積が少ない乗用車対貨物車の衝突事故を事例として取り上げ、事故空間的分布を明らかにするとともに、事故件数に影響を与える地理的な要因を把握することを目的とする。本研究の成果は乗用車対貨物車の衝突事故を削減するための参考資料として活用されることが期待される。 本研究の特徴として2点が挙げられる。1点目は乗用車と貨物車の衝突事故に着眼する点である。乗用車と比較し、貨物車はより頑丈で、構造も異なるため、衝突事故による乗用車の被害が大きいことが多い。このような衝突事故防止に向けた知見を得るため、事故地点分布の空間的特性を把握する。2点目は貨物車の車種を軽貨物車と一般貨物車に分けて検討する点である。一般貨物車は軽貨物車と比較して利用目的が異なる。例えば、一般貨物車では事業用車が多いため、工業や準工業地域における事故件数が多いと推測される。一方で、軽貨物車は小規模輸送や農作業の車両として使われることが多いため、事故件数は工業・準工業の土地利用との関連性は殆どないと推測される。このような貨物車の車種を考慮した乗用車との衝突事故件数に影響を与える要因を解明する。 3-1-2 方法 まずは福岡県2016~2018年の交通事故データ、人口統計、土地利用、道路交通等の基礎データを第3次地域メッシュ(1kmメッシュ相当)で整理した。なお、道路が整備されていないメッシュ及び分析用途地域を含めないメッシュを分析対象から除外した。ここで、福岡県の交通事故データは福岡県オープンデータサイトのHP(図 3-1参照)から入手したもので、交通事故内容(死亡・負傷)・事故類型(人対車両・車両相互・車両単独・列車)等の情報が把握できる。また、人口統計、土地利用、道路交通等の基礎データは国土数値情報ダウンロードサービスのHP(図 3-2参照)から入手したものである。 11 CSIS DAYS 2020のHP,http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/blog/research/csis-days-2020-program/
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