32.適⽤するアプローチの検討 本研究では、⾛⾏空間として安全⾯において「優れている」にも関わらず、⾃転⾞空間利⽤率の低い区間について、利⽤者⼼理といったソフト的観点からの新たなアプローチを実施し、利⽤率向上を⽬指すことを主眼としている。 当初、本研究では、昨年度実施した「同調」とともに「バンドワゴン効果」に着眼した研究を検討した。バンドワゴン効果とは、勝ち⾺効果とも呼ばれ、多数派と報じられた情報に意⾒が引きずられる現象を⾔う。 この現象は⼤局的にみると「同調」の⼀種とも捉えることができる。図 2-1は、昨年度、豊⽥市昭和町で実施した同調実験における⾞道⾛⾏率の変化を⽰している。本研究では「同調」を誘発させるために研究対象路線において複数台(3〜6台)の“サクラ”⾃転⾞を⾛⾏させた。そのため、路線全体の⾞道⾛⾏台数が増加し、調査時間帯においては⾞道⾛⾏が「多数派」となる現象を作り出していた。図 2-1は“サクラ”⾃転⾞を除外した結果であるので、実験中の⾞道通⾏率は、図に⽰される以上に⾼かった。図 2-1は実験期間中の全体の通⾏率変化を⽰しているので、実際に“サクラ”⾃転⾞のすぐ後⽅を⾛⾏し、その影響を受けて「同調」した⽅もいれば、⾛⾏タイミングの関係で“サクラ”⾃転⾞からは距離があったものの、“サクラ”⾃転⾞の⾛⾏により普段より多数派となっていた⾞道⾛⾏を体験していた⽅も含まれる。そして、昨年度の同調実験で“サクラ”⾃転⾞のすぐ後⽅を⾛⾏していた「同調」の直接的影響を受けた利⽤者は、解析対象者のごく⼀部だった。よって、図 2-1の結果は、「同調」の影響というよりも、むしろ「バンドワゴン効果」の影響が反映されたものであると解釈することができるようにも思われる。無論、今回の結果はバンドワゴン効果の定義である「多数派と報じられた情報」ではなく、「多数派の状況」であるので、これをバンドワゴン効果と明⾔してよいか明瞭ではないものの、この結果を踏まえ、今年度の検討においては、バンドワゴン効果に加え、バンドワゴン効果以外の新たな有効なアプローチについても検討を加えて⾏くことが本研究の発展性を考えるうえで有益ではないかと考えた。
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