2020年度 自主研究概要 報告者:三村泰広・坪井志朗 研究分野 1.暮らしを支える交通、2.都市空間を創出する交通、3.交通の安全・安心 業務類型 1.調査、2.解析、3.政策検討、4.その他 研究題目または 報告書タイトル 自転車通行空間利用率向上に向けた新たなアプローチの試みと地域への展開 研究の背景・内容 ・自転車は、昭和40年代の自転車の歩道通行を可能とする交通規制の導入以降、車両としての自転車の位置付けや通行空間が曖昧なままに道路基盤が整備され、自転車と歩行者の交通事故の増加などの弊害が生じてきた。この解消に向け、警察庁及び国土交通省では平成23年以降、自転車の車両としての位置付け及び通行空間のあり方に関するガイドラインの作成や法改正等を実施し、地方自治体ではそのガイドラインに従った対応を進めている。しかしながら、このような整備過渡期であるがゆえか、整備された空間を利用せず、これまでの慣習に従った通行を維持する自転車利用者も多いなど、利用と空間のギャップが生じている。 ・2018年度は、利用実態と教育実態から自電車通行空間の在り方に関する研究を進め、2019年度は特にソフト面からの試みとして、「同調」といった社会心理学の知見を援用し、構造的課題がみられないにも関わらず利用されない自転車通行空間において、当該手法による利用率向上の影響を明らかにした。今年度も引き続き社会心理学・経済・政治学の知見を援用し、特に構造的課題がみられないにも関わらず利用されない自転車通行空間で、当該手法による利用率向上の影響を明示することを目的とする。なお、当初、新たなアプローチの地域活動への展開方法について、崇化館地区を対象に検討することも想定していたが、コロナ禍により調整が困難となり、今回実施を見送った。 研究結果・ 得られた知見等 ・人の行動に動機を与える際に重要と言われるSocial Incentives (SI)(社会的動機、人は他人の行動が気になり、同じようにするか、より良い行動をしたいとする)に着眼し、「車道通行」のSI情報-すなわち他者の通行実態-の提供が利用者の意識(行動意図)を変えさせるかどうかを比較的大規模なサンプル調査(n=840)を通じて検証した。結果、特に2車線道路の車道混在では提示内容で有意差(p<0.01)があり、特にSI、罰則情報の提供が車道走行をさせる影響が大きいこと、専用通行帯の場合、高校生、若年層においてSIの効果が大きいこと、個人属性などの共変量の影響を踏まえても、情報提供内容は有意に車道走行意識に影響することなどを示した。 ・自転車走行空間に当該空間の通行率を示した看板を設置し、直前週の車道通行率情報(SI)に加え、直前週の状況から通行率の改善がみられた場合、看板に「いいね!」マークを提示するReward(R)、直前週の情報と今週の情報を併記し、状況の進展を提示するProgress Monitoring(PM)の情報提供をした場合の利用者(n=2,040)の行動変容について実フィールドでの検証をした。結果、看板設置後の車道通行率が向上したこと、特に設置期間の後半になればなるほど車道通行率が上昇したことなどを示した。 研究成果 社会への貢献、 報告、技術的特徴等 ・構造的課題がみられないにも関わらず利用されない自転車通行空間において、利用率向上が科学的に確認された具体的施策を提言した。 所内の担当者氏名・担当者 三村泰広・坪井志朗 協力先名 大同大学工学部嶋田喜昭教授、菅野甲明技術員(共同研究)、株式会社マクロミル(意識調査実施) 問題点・課題・今後の研究予定・その他
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