自転車通行空間利用率向上に向けた新たなアプローチの試みと地域への展開
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243-1-4.まとめ 本研究は「⾞道通⾏」のSI情報の提供が⾃転⾞利⽤者の⾞道⾛⾏意識に影響を与えるかどうかを⽐較的⼤規模なサンプル調査を通じて検証した。本研究で得られた知⾒は以下のとおりである。 各群(制御群、SI群、罰則群)別の⾛⾏位置意向の傾向について独⽴性の検定を通じて確認した。結果、⾞道混在(p<0.01)、整備なし(p<0.01)で群間に有意差があり、SI群、罰則群において⾞道⾛⾏すると回答する割合が⾼く、特に罰則群でその傾向が顕著であることを⽰した。 交通事故の発⽣に顕著な傾向がみられる年齢に着眼し、年齢別でみた群別の⾛⾏位置意向の差について同様に独⽴性の検定を通じて確認した。結果、いずれの空間でも⾼齢者層の⾞道⾛⾏の指摘割合が突出して低いこと、⾃転⾞専⽤通⾏帯では、⾼校⽣及び若年層においてSI群の⾞道通⾏の指摘割合が⾼く、特に多⾞線では若年層において有意(p<0.1)に⾼い傾向がみられることを⽰した。他⽅、⾞道混在および整備なしでは、いずれの年代においても罰則群の「⾞道を⾛⾏する」の指摘割合が⾼く、特に多⾞線の⾞道混在における若年層(p<0.01)および整備なしにおける中年群(p<0.01)において有意に⾼いことを⽰した。 SIといった⼀種の情報提⽰による「介⼊」が、対象者の個⼈属性や居住地域の⾃転⾞通⾏空間の実態、リスク認知を前提とした場合に、⾛⾏位置の意向に対して有意な効果をもたらすか否かについてロジスティック回帰モデルの構築を通じて検証した。結果、結果、SI群ダミー(p<0.01)および罰則情報群ダミー(p<0.001)いずれも⾼度に有意となっており、個⼈属性や居住地域の⾃転⾞通⾏空間の実態、道路構造といった共変量の影響を踏まえても通⾏位置意向に影響を与えることを⽰した。また、オッズ⽐はSI群ダミーが1.253、罰則情報群ダミーが1.569であり、それぞれの情報提⽰によって提⽰しない場合に⽐べて約1.3倍〜1.6倍、⾞道通⾏意向を⾼める可能性があることを⽰した。 構築したモデルの妥当性をみながら、計画的観点から介⼊可能性の⾼い変数の傾向に触れつつ、⾃転⾞通⾏空間の適正利⽤におけるSI提⽰の意義について考察した。結果、構築したモデルがある程度妥当性があることを前提としつつ、⾃転⾞通⾏空間の整備に⽐べてSI提⽰が⾞道通⾏意向に与える影響は⼤きくないものの、計画および政策としての実施しやすさ、実施時に有効となる影響範囲の広さという観点を加味すれば、SIや罰則情報といった情報提⽰による⼿法の有⽤性は決して低くないことを指摘した。また、実証に際してはSIの特性を考慮し、そもそも⾞道通⾏意向が低いような空間を提⽰する際には罰則情報を、ある程度の⾞道通⾏意向の⾼さが期待できる空間を提⽰する際にはSIを提⽰するなどその⽅法を⼯夫することが有益であることを指摘した。 本研究の課題は以下のとおりである。

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