自転車通行空間利用率向上に向けた新たなアプローチの試みと地域への展開
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23ついでヘルメット着⽤(odds=4.902)、⾞道混在(⽮⽻根)整備(odds=3.097)となっており、他の変数に⽐べその実施による⾞道通⾏意向に与える影響が極めて⼤きい。特に、⾞道混在(⽮⽻根)の居住地域における整備割合が上昇することは整備空間以外も含めた全体の⾞道通⾏意向を押し上げる(odds=1.777)ことにも通じることが期待される。⾃転⾞利⽤者の⾞道通⾏意向を⾼める上で、⾃転⾞通⾏空間整備を推進することの重要性は極めて⾼いことが改めて確認できたといえよう。ここで、SI(odds=1.253)と罰則情報(odds=1.569)のオッズ⽐をみると、⾃転⾞通⾏空間整備やヘルメット着⽤と⽐べるとさして⼤きな値ではく、保険加⼊(odds=1.209)やシティサイクル(odds=0.614)、電動アシスト(odds=0.638)以外の⾃転⾞(すなわち、ロード・クロス・マウンテンバイクといったスポーツタイプ)の利⽤とほぼ同等の影響程度である。他⽅で、計画および政策としての実施しやすさ、実施時に有効となる影響範囲の広さという観点を加味すれば、SIや罰則情報といった情報提⽰による⼿法の有⽤性は決して低くない。例えば先に⾔及した英国の事例4に⽴ち帰れば、SIなどの情報提⽰は単に通知⽂を利⽤者に送付するだけでその効⼒を発揮する可能性がある。⾔うまでもなく、これは上述で検討した施策よりは低コストで実施可能となろう。本研究はあくまで「意向」を確認するという観点からの成果に過ぎないが、今後、⾃転⾞通⾏空間利⽤の予想される地域に居住する住⺠に対して⾃転⾞利⽤に関する通知⽂を実際に送付するなどの実証を⾏う意義は決して低くないのではなかろうか。 ところで、本研究では、SIの⽐較対象として罰則情報の提⽰の効果を確認した。結果としてオッズ⽐にも⽰されるように、罰則情報の提⽰がSIの提⽰より⾞道通⾏意向を⾼める可能性があることが⽰唆された。この原因として、本研究では先述した提⽰画像枚数(6枚)の制約等もあり、そもそも制御群においての⾞道通⾏意向が低くなる回答が予想された空間を多く含まざるをえない形で実施したといった影響が予想される。今回提⽰したSIによる⾞道通⾏意向の提⽰内容は最⼤77%、最低18%であった。SIは「⼈は他⼈の⾏動が気になり、同じようにするか、より良い⾏動をしたいとする」概念である。よって、提⽰される他⼈の⾞道通⾏意向割合が低ければ、⾃⾝の回答も低い⽅に引き寄せられてしまう。今回の結果においても、⾞道通⾏意向の割合が7割を超えた空間(図 3-1画像①、④)では、いずれも罰則情報提⽰に⽐べSI提⽰の⾞道通⾏意向の割合が⾼かった。今後、実証実験を検討する際においては、このようなSIの特性を考慮し、そもそも⾞道通⾏意向が低いような空間を提⽰する際には罰則情報を、ある程度の⾞道通⾏意向の⾼さが期待できる空間を提⽰する際にはSIを提⽰するなどその⽅法を⼯夫することがよりよい成果を期待する上で有効かもしれない。

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