自転車通行空間利用率向上に向けた新たなアプローチの試みと地域への展開
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22⾞道整備割合、多⾞線ダミーであった。これらの変数はいずれも⾼度に有意(p<0.01)、もしくは極めて⾼度に有意(p<0.001)となっている。男性、普段利⽤する道路の⾞道混在整備割合の⾼さ、⾃転⾞専⽤通⾏帯および⾞道混在(⽮⽻根)の整備が有意に⾞道⾛⾏意向に影響を与え、道路構造が多⾞線である場合、有意に歩道⾛⾏意向に影響を与えるといった結果は、岡⽥ら10の結果を⽀持するものである。岡⽥らの研究10はその⼿法を含め本研究の内容に近く、本研究から得られる成果のある程度の⼀般性が確認できたといえる。他⽅、本研究で有意となった年齢に関する変数(⾼齢者(65歳以上)ダミー)は岡⽥ら10の成果では有意となっていない。しかし、⼼⾝機能の低下する⾼齢者はより安全な歩道⾛⾏をする意向が⼤きいという結果に違和感はなく、妥当な結果であると判断できよう。ところで、これらの結果は、岡⽥ら10の成果に加え、⾛⾏実態調査をベースとする先⾏研究8の結果とも整合し、概ね妥当であると判断されうるものの、いくつかその解釈が難しいものもある。例えば、保険加⼊が⾞道通⾏意向を⾼めるという結果である。この結果についていくつか解釈ができようが、例えば、Wildeが提唱するリスク・ホメオスタシス理論17―危険を回避する⼿段・対策をとって安全性を⾼めても、⼈は安全になった分だけ利益を期待してより⼤胆な⾏動をとるようになるため、結果として危険が発⽣する確率は⼀定の範囲内に保たれるとする理論(デジタル⼤辞泉より引⽤)―を踏まえれば、保険加⼊という⾏為によって⾞道⾛⾏のリスク⽔準が低下し、⾞道⾛⾏というより⼤胆な⾏動意図が創出された結果ではないかと解釈できよう。なお、ヘルメットの着⽤においても同様の解釈ができよう。なお、公共交通利⽤頻度の多さが⾞道通⾏意向を⾼めるという結果や、普段利⽤する道路の⾃転⾞道整備割合の⾼さが⾞道通⾏意向を低下させるという結果は、その関係性の予測が難しい。擬似相関である可能性も予想されるが、その場合、その影響変数が何であるか予測することは困難である。よって、これらの変数は有意ではあるものの、本研究での解釈は保留とし、今後の追試等により検証するとしたい。また、当初影響を想定した認知リスクについては、いずれの変数も有意とはならなかった。この理由についても今後の課題としたい。 さて、ここからSIや罰則情報とともに、計画的観点から介⼊可能性の⾼い変数の傾向をみる。政策等による介⼊可能性が期待できる変数は、個⼈に帰属する変数ではない、保険加⼊、ヘルメット着⽤、利⽤⾃転⾞の⾞種(シティサイクル・電動アシスト)、居住地域の⾃転⾞通⾏空間整備割合(⾞道混在)、⾞線数および⾃転⾞通⾏空間の整備内容(⾃転⾞専⽤通⾏帯・⾞道混在(⽮⽻根)などであろう。オッズ⽐をみると、⾃転⾞専⽤通⾏帯整備が最も⼤きく(odds=7.692)、 17 Gerald J. S. Wilde (1982) The Theory of Risk Homeostasis: Implications for Safety and Health, Risk Analysis, 2, 4, p.209-225

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