19情報提⽰内容が⾛⾏位置意向に与える影響の検証 情報提⽰による「介⼊」が、対象者の個⼈属性や居住地域の⾃転⾞通⾏空間の実態、リスク認知といった他の影響要因(共変量)を前提とした場合に、⾛⾏位置の意向に対して有意な効果をもたらすか否かについて回帰モデルを構築することで検証する。 ⽬的変数は提⽰した6つの空間における通⾏位置の選択結果である。上述のように、本研究では対象者はそれぞれの空間について、⾞道もしくは歩道の通⾏意向を4⽔準(⾞道を⾛⾏する、主に⾞道を⾛⾏する、主に歩道を⾛⾏する、歩道を⾛⾏する)で回答している。4⽔準としたのは、提⽰情報を前提とした意向、すなわち想定回答をするといった調査であることから、対象者の想定の「揺らぎ」を踏まえてより回答しやすいよう、それぞれの⼿段に対して「主に」といった抽象表現の回答を⽤意したものである。すると、「主に」と回答した群は、⾃⾝の回答に確証がないと予想される群とも捉えることができる。この群をどのように扱うかが結果に少なくない影響を与えることが予想されるが、本分析では「⾞道を⾛⾏する」、「主に⾞道を⾛⾏する」を「⾞道⾛⾏」回答群、「主に歩道を⾛⾏する」、「歩道を⾛⾏する」を「歩道⾛⾏」回答群とした。この理由は、本調査において「歩道を⾛⾏する」と回答した対象者が少なく、分析対象サンプルの偏りの影響がモデルに少なくない影響を与える可能性が⾼いと判断したためである。無論、このような処理を⾏う場合、回答の「揺らぎ」の影響を捉えることはできない。この点は、本研究の限界であるとともに、追試等を通じたさらなる検討が重要であることは指摘をしておきたい。 使⽤する回帰モデルは、ロジスティック回帰モデルである。解析にはR version 4.0.3を使⽤した。⽬的変数は「⾞道⾛⾏」回答群をダミー変数化したものである。検討に⽤いた説明変数を 表 3-4に⽰す。サンプル数は道路構造の影響を捉えるため、6空間の回答を統合したものを採⽤している。いくつかのダミー変数は関連する変数との相関関係から除外しているが、その際、除外したのはモデルの解釈のしやすさの観点から⽐較的影響が少ないと判断したものである。またモデルの解釈を容易にするため、AICによるステップワイズ(増減法)を⽤い、説明変数の選択を⾏なった。 結果を表 3-5に⽰す。モデルの精度を表す指標の⼀つであるMacFaddenの擬似決定係数は0.155と決して⾼くはない。また、定数項が有意となっていない。想定した影響要因から⾛⾏位置意向をモデル化することは容易ではないことがわかる。他⽅、本研究の狙いは、個⼈属性などの共変量の影響を踏まえても情報提⽰内容が⾛⾏位置の意向に対して有意な効果をもたらすか否かについて明らかにすることにある。情報提⽰内容の影響についてみると、SI群ダミー(p<0.01)および罰則情報群ダミー(p<0.001)いずれも⾼度に有意となって
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