自転車通行空間利用率向上に向けた新たなアプローチの試みと地域への展開
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11に影響を与えることが予想された⾃転⾞利⽤頻度、利⽤⾃転⾞種別(ママチャリ/スポーツなど)、ヘルメット着⽤、⾃転⾞利⽤時の状況や、これまでその影響が確認されているとはいえない保険加⼊状況や過去の⾃転⾞乗⾞時の事故・ヒヤリ経験数の実態に加え、BMI、⾒えづらさ・聞き取りづらさといった⾝体機能についても把握した。同様に、既往研究10から回答への影響が予想された対象者が普段⾛⾏している専⽤通⾏帯や⾞道混在などの⾃転⾞通⾏空間の実態についても把握した。また⾞道通⾏を回避するという点において、その主原因となっているのは⾛⾏時の安全性の問題である11。よって、⾛⾏位置の判断においては、各対象者が⾃転⾞の⾛⾏に対してどのようなリスクを⾒積もっているかが重要と予想する。本研究では、リスク認知に関する体系的整理を⾏ったSlovicの提唱する概念12を参照する。Slovicは、リスクの認知を構成する成分は、⼤きく、そのリスクが未知のものであるかどうか(未知:un-known)、破滅的なものであるかどうか(脅威:dreadful)、そしてそのリスクを⾃分で回避できるかどうか(回避:voluntary)であるとした。この構成概念を⾃転⾞事故のリスクに置き換え、対象者個⼈が認知する未知・脅威・回避のリスクを計測した。具体的には、未知は発⽣確率の認知程度、脅威は発⽣時の恐怖度、回避は⾃⾝で知覚する回避能⼒である。これらに加えて、提⽰した空間別の⾛⾏位置意向を把握した。提⽰する空間について、これまで多くの研究例えば131415で指摘されるように、当該空間の持つ特性−道路構造や⾃転⾞通⾏空間の種類−が回答傾向に影響を与えることが容易に予想される。他⽅で、対象者の回答負荷とそれによる回答誤差を考慮する上で、提⽰する空間数は極⼒厳選されることが望ましいと考えた。よって、ここでは道路構造として⾞線数の違い(多⾞線、2⾞線)および通⾏空間として、整備内容の違い(専⽤通⾏帯、もしくは⾞道混在(⽮⽻根)、整備なし)の2視点のみを考慮した。提⽰した空間を図 3-1に⽰す。⾞線数(2パターン)及び整備内容(3パターン)それぞれが異なる全6パターンを⽤意し、当該空間における通⾏位置を回答してもらった。各画像は愛知県下において実在する⾃ 11 例えば、坪井 志朗, 三村 泰広, 嶋⽥ 喜昭, 菅野 甲明, 出⼝ 智也(2019)講習会スタイルによる⾃転⾞教育の効果に関する研究, ⼟⽊計画学研究・講演集, 60. 12 Slovic, P.(1986) Informing and educating the public about risk, Risk Analysis, 6, 403-415 13 ⼩川 圭⼀, 松隈 矩之, 押川 智亮(2010)歩道設置道路における⾃転⾞の歩⾞道選択⾏動に関する分析, ⼟⽊計画学研究・講演集, 38. 14 ⿃本 敬介, 廣畠 康裕, 松尾 幸⼆郎(2013)⾃転⾞利⽤者の通⾏帯選択の実態とその要因分析−左側通⾏か右側通⾏かに着⽬して−, ⼟⽊計画学研究・講演集, 48. 15 ⼭中 英⽣, 原澤 拓也, ⻄本 拓弥(2017)サイクリストによる多様な⾞道内⾃転⾞通⾏空間の安全感評価, 交通⼯学論⽂集, 3, 4, p.A_15-A_21

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