リアルタイム情報に基づく平面交差点信号制御システム最適化に関する研究
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1 1. はじめに 信号交差点は、道路が交差する地点における交通流を制御することで、交通の安全と円滑化を実現している。一見すると、赤、青、黄色の灯火が交替で点灯することにより道路交通を制御する単純な装置であるが、その制御の最適化という問題はかなり奥が深い(越 正毅,1989)。 道路に信号交差点を設置する際は様々な問題点を考慮する必要があるが、その中でも交通安全は最も重要な点と言える。しかし、交通安全を確保することばかりを考えると、渋滞を誘発することや、あるいは、渋滞を拡大させる懸念がある。交通安全確保と渋滞最小化の両方を同時に実現することは、交通管理者と研究者の目標である。英国道路研究所(1996年から交通研究所)のWebsterが1957年に、現在において世界の広範囲で採用されている平均遅延最小化を目指す信号制御設計方法を提案した。この方式は日本でも利用されている方式である(交通工学研究会,2018)。オーストラリア道路調査委員会のAkcelikは、1981年にWebsterの研究に基づいて、影響要素を加える信号制御設計方法を提案した。また、アメリカ交通輸送調査委員会出版のHighway Capacity Manual5)(以下HCMと呼ぶ)においては、遅延時間の計算方法が記載されている。上述の3つの研究に限らず、信号サイクルの概念を基本とした信号制御設計方法と遅延時間を求める手法は、これ以降「伝統的な信号制御設計方法:伝統的な方法」と呼ぶこととする。伝統的な方法が採用している遅延時間の計算方法と最短サイクル時間を求める手法は、信号制御において基礎となる思想である。 図 1-1 未来クネクティッド交差点のイメージ

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