高齢者に対する施策の実施が健康寿命に及ぼす影響に関する研究
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1 1.はじめに 1-1.研究の背景 我が国の平成30年10月1日現在の65歳以上人口は約3,558万人となり,総人口に占める割合(高齢化率)は28.1%となった1).今後も高齢化率は上昇を続け,令和47年には38.4%に達し,国民の約2.6人に1人が65歳以上となる社会が到来すると推計されている1).これらの背景から,高齢者の平均寿命の延伸だけでなく,健康寿命の延伸にも関心が高まっている.健康寿命とは,WHOが提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間であり,日本ではこの寝たきりの期間が欧米各国と比べても長く6年以上にわたるとされている1).健康日本21では, 国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向として,健康寿命の延伸と健康格差の縮小を掲げている.平均寿命と健康寿命の推移をみる1).平均寿命では,平成13年男性が78.07歳,平成13年女性が84.93歳,平成28年男性が80.98歳,平成28年女性が87.14歳となっている.健康寿命(日常生活に制限のない期間)では,平成13年男性が69.4歳,平成13年女性が72.65歳,平成28年男性が72.14歳,平成28年女性が74.79歳となっている.平均寿命と健康寿命でともに延伸する結果となっている.ここで平均寿命と健康寿命の差をみると,平成13年男性で8.67歳,平成13年女性で12.28歳,平成28年男性で8.84歳,平成28年女性で12.35歳となっている.平均寿命と健康寿命自体は延伸しているものの,その差は縮まっていない. 平均寿命,健康寿命,平均寿命と健康寿命の差について都道府県別に比較する1).男性の平均寿命では滋賀県が最も高く87.78歳,青森県が最も低く78.67歳となっている.女性の平均寿命では長野県で最も高く87.67歳,青森県で最も低く85.93歳となっている.男性の健康寿命では山梨県が最も高く73.21歳,秋田県が最も低く71.21歳となっている.女性の健康寿命では愛知県が最も高く76.32歳,広島県が最も低く73.62歳となっている.平均寿命と健康寿命の差では,男性では奈良県が最も大きく9.97歳,青森県が最も小さく7.03歳となっている.女性では広島県が最も大きく13.71歳,栃木県が最も小さく10.51歳となっている.平均寿命と健康寿命の差について,男性では奈良県と青森県で2.94歳,女性では広島県と栃木県で3.20歳の差がみられる.都道府県により平均寿命,健康寿命,平均寿命と健康寿命の差が異なることから,都市の構造や食生活など何らかの要因が影響していることが考えられる. 本研究では,健康寿命や,平均寿命と健康寿命の差に寄与する都市・交通要因について明らかとすることを目的とする.

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