47 7.おわりに 本研究では、過疎地域におけるコミュニティ交通の持続可能性に着目し、アンケート調査やヒアリング調査によって実態を把握し、その結果を踏まえて持続可能性に影響する項目や、地域における創意工夫の実態を明らかにした。 まず、地域公共交通や福祉輸送を調査した報告書の文献調査により、お金の問題だけでなく人手不足の問題も深刻なこと、旅客運送事業者以外の団体にとっては事故リスクも課題であることなどを把握した。 そして、文献調査等を参考に抽出した127事例に対してアンケート調査を実施し、67の回答(回収率53%)を得た。その結果、5年後の運行継続に対して人材確保・財源確保が困難な団体が4割程度あることを確認した。人材や財源を確保できると回答した団体でも、人材は交通事業者任せ、財源は行政の補助金頼みの団体があった。 さらに、アンケートの回答を深掘りするため10団体に対してヒアリングを行った結果、行政の補助金は今すぐに見直される状況ではない事例が多いこと、交通事業者の内部事情は把握されていない事例が多いことが分かった。また、行政以外の団体が自律した運営を行っている場合は、移動確保だけでなく地域全体の価値向上を意図した運営を行っていることが読み取れた。 アンケート結果を用いて人材や財源確保に影響する要因を分析した結果、運営の評価・改善や自治体計画への位置づけなど、運営側の「ひと」に関わる要素が多く関係することが明らかとなった。 これらの結果から以下の点について考察した。人材確保だけでなく、運営側の「ひと」への対応が急務である。一緒に運営に関わる仲間づくりや、相談できる人を外部に持つことも重要である。持続可能性を担保するためのサービス改善を進める際には、環境づくり(機運醸成)を行うことも重要である。財源は行政予算の範囲でねん出できるが、人材はそうはいかない。数年後の見通しがない地域が少なくないため人材確保対策は急務である。
元のページ ../index.html#52