過疎地域におけるコミュニティ交通の持続可能性に対する意識と取り組み
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45 6.考察 (1)コミュニティ交通の持続可能性に関する考察 アンケート調査に引き続き実施したヒアリング結果より、コミュニティ交通が持続する見通しを持つ団体の特徴として、2つの形態を上げることができる。ひとつは、地域に根差した事業者・地域住民の発意で行われる移動サービス、もう一つは、自治体が主体となり行われる移動サービス(潤沢でなくとも補助がある)である。 前者は、運行の目的が移動サービスの確保にとどまらず、地域の活性化や地域価値の向上までを見据えていることに特徴がある。そのために必要となる様々な創意工夫を行うことで、結果的にコミュニティ交通が持続可能となっている場合が多くみられた。 後者については、行政の補助金が移動サービスを支える重要な役割を担っていることを浮き彫りにしたといえる。移動サービスの補助金を行政が負担することに対して合意が取れている地域では問題にする必要がないかもしれない。しかし、首長や住民が否定的な意見を持っていたり、今後の社会環境の変化で意見が変わる可能性はどこの自治体にでも潜んでいる。特にコロナ禍においては、ただでさえ不要不急の移動自粛により利用者が減少している中、行政における感染予防対策にかける予算が大きくなり、移動サービスの補助金が十分に確保されなくなる恐れもある。様々な可能性を考慮し、将来起こりうる問題に対処しうるよう、常に補助金以外の財源確保や、交通事業者に対する支援、ドライバー確保のための情報発信に取り組むことが重要と考えられる。 また、本研究で得られた知見を総合して考えると、コミュニティ交通を持続可能なものとする重要な考え方として、「移動サービスが運行団体の本業の利益につながるとの考え方」が挙げられる。ここでいう本業とは、まちづくり団体や社会福祉法人が行う移動サービスではない業務のことを指す。行政は、多くのコミュニティ交通の運行に重要な役割を担っている。行政にとっての「本業」は、大雑把に言うと住民サービスといえる。コミュニティ交通の持続可能性を考える際、行政の本業と移動サービスとの関係を問い直すことが重要といえるのではないだろうか。

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