過疎地域におけるコミュニティ交通の持続可能性に対する意識と取り組み
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41 1)ひと コミュニティ交通が運行団体の本業(団地管理や社会福祉法人)の利益につながるとの考え方で運営されている場合は、支出可能な範囲内でよりよいサービスを提供する意向が強いことが確認された。そうした事例では、移動サービス以外の収益を獲得する努力がなされている。 また、コミュニティ交通を自治体(行政)が運営する場合、地域住民が積極的に関与する(つまり、自ら汗をかく)ことで行政と地域との信頼が生まれ、行政も地域の意向に応えていることが確認された。 これらの事例に共通するのは、運営者が利用者や地域住民と直接接点を持っていることである。運営者が、コミュニティ交通を運行する目的を認識し、利用者や地域住民と連携し、目的を果たすために様々な試行錯誤や創意工夫を行うことが、コミュニティ交通の持続可能性につながるといえる。 2)環境 自治体主導、あるいは運行経費の大部分を自治体の補助金で賄う方法で運行する事例では、運行費獲得に苦慮する場合もあるが、継続的な財源確保は可能と判断されている場合が多い。これは、地域特性(都市・郊外・過疎)による特徴的な傾向は確認できない。ただし、将来的な補助の減額の可能性は否定できず、現状よりも補助額を増額することは困難と思われる。 また、都市部から離れた過疎地では、地域全体で人手不足が深刻な中、運転手の確保が極めて困難な状況にある。 3)サービス サービスの質を高めるために先進技術(例えば、グリーンスローモビリティ、デマンド運行、AI配車・予約)を導入、または、導入を検討する事例がある。導入済みの事例では、先進技術を活用することで、得られる利点が従来よりも多くなることを確認したうえで導入している。また、導入を検討している事例では、先進技術導入によるコスト増が避けられない中で、コスト増分を賄うための利用者負担を検討している。これらに共通するのは、「先進技術ありき」ではなく、先進技術導入による利便性向上と負担増のトレードオフの判断や、対象地域の特性に合致しているかの見極めを、運行主体自らが行っていることである。 一方で、導入した先進技術の運用が負担となり、利用をやめる場合もみられる。事例としては数少ないが、自治体主導、先進技術ありきで移動サービスが始まった事例がある。当面は自治体の補助金で運営が継続できていたものの、移動サービスが軌道に乗らない間に補助金が打ち切られることになり、やむなく費用の大きな割合を占める先進技術の活用を断念することになった。なお、この事例では、先進技術の活用断念後も、ローコストな方法に転換して運行が継続されることとなっている。

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