重度障がい者の外出を伴う余暇活動の企画・実行プロセスと交通配慮事項に関する研究
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1はじめに 1-1.研究の背景 2016年に障害者差別解消法が施行され、すべての国民が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する取り組みの重要性が高まっている。マイノリティであるが故、これまで社会から見過ごされてきた方々として、重度障がい者がいる。本研究で対象としたいのは、完全介護が必要な重度障がい者の交通である。岡1や宇沢2が指摘するように、交通は国民の多様な生活の目的を達成するうえにおいて極めて重要なものである。これは重度障がい者にとっても例外ではない。例えば、令和元年度に実施した大阪府羽曳野市に所在する重度障がい者支援において様々な外出を伴う活動を行うなど、先進的な取り組みを実施する障がい福祉サービス事務所「三杉」の担当者へのヒアリングによると、外出を伴う活動を増やすことよって、施設利用者(重度障がい者)の心身状態が劇的に改善した例があったという。完全介護が必要な重度障がい者の交通を考える場合、障がい当事者の特性のみならず、介助者の同行が前提となる点を踏まえた交通配慮の検討が必要である。しかし、そもそも重度障がい者の外出特性に関する知見が少なく、外出時の配慮すべき事項に加え、外出が障がい当事者の生活の質(QOL)に与える影響の大きさに関する学術的知見も少ない。本研究は、外出のノウハウを有する福祉サービス事業所に協力いただき、重度障がい者の余暇活動のための「外出」の実態とその計画・実行プロセスにおける課題を明らかにし、それを踏まえた重度障がい者の外出を伴う余暇活動のさらなる促進に向けた配慮すべき方向性を検討することを目的としている。 1-2.研究の内容 (1) 既往研究の整理(2章) 重度障がい者の外出、外出支援等に関する既往研究について整理する。 (2) 「外出を伴う余暇活動」の実態把握(3章) 重度障がい者の余暇活動のための「外出」の実態に関して、障がい者施設へのアンケート調査を通じて把握する。 (3) 「外出を伴う余暇活動」の計画・実行プロセスとその課題の把握(4章) 半構造化インタビュー等により、外出を伴う余暇活動の計画・実行プロセスとその課題を把握する。 1 岡並木(1981)「都市と交通」,岩波新書 2 宇沢弘文(1987)「公共経済学を求めて」,岩波書店7

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