36重度障がい者の「外出を伴う余暇活動」の促進に向けた配慮すべき⽅向性 上記の重心者の外出を伴う余暇活動の計画・実行プロセスとその課題の整理を踏まえ、当該活動の促進に向け配慮すべき方向性を検討する。 まず何より、当該活動を始める起点となるのは、実施の「動機」が創出されることであり、今回の調査では、「施設代表者」と「重心者家族」の二つの主体からの意向が影響する可能性が高いことがわかった。この点から、当該活動の促進に向けては、それぞれの主体に働きかけることが重要となるが、その際、当該活動の意義の伝達は勿論、特に重心者家族には、例えば表 4-7にて施設Bから指摘があるように、当該活動の実施に伴い生じるリスクの説明とその対応方法、実施に際して生じる費用への配慮が重要となろう。 (施設Bからの指摘)重心の方の場合、かならず看護師が同行する。看護師は万能ではなくできることは限られるが、その辺りもご家族は承知したうえで参加を承諾している。(そのようなリスクを上回るメリットが外出の余暇活動にあると考えている) 計画プロセスにおいては、主に訪問施設・実施内容と移動方法の決定が主要事項になるが、まずは事業所において課題として認識されている影響事項である食事・トイレ・医療的ケアに関する施設キャパシティの改善と、駐車場や施設への自動車でのアクセス向上が重要な方向性となろう。また、事業所から課題とは意識されていないものの、外出可能時間は、訪問施設・実施内容を制約する影響の大きい要因であった。この外出可能時間は、事業所の経営とつながりが強い。いわゆる、生活介護の報酬は1日単位であり、想定する営業時間以上の支援は事業所収益をダイレクトに圧迫する。延長支援加算の仕組みもあるものの、事前の届出が必要で1日単位での支給でその額も低い(1時間未満61単位、1時間以上92単位加算)など、営業時間を延長するインセンティブにはなりづらいことが予想される。計上されない送迎時間の組み込みや延長支援加算の考え方など、より柔軟な給付制度設計のあり方を検討していく重要性は高いであろうし、まずは現行の枠組みの中で、重心者が外出を通じて様々な経験ができる機会をより多く提供するためのさまざまなノウハウを形式知としていく取り組みの重要性も高いといえよう。 実行プロセスは、重心者の実際の体験につながる部分であり、施設職員や訪問先スタッフの配慮、対応が影響する。この点についてはいずれも事業所として課題を認識しており、重心者だけでなく、経験の少なさなどから職員自身が感じる不安といった側面への配慮が重要となる。例えば、さまざまなシチュエーションを体験する外出を伴う余暇活動の支援に関する研修機会を設けるなどは一つの方向性であるかもしれない。何より、このような機会を積極的に増やすことが職員の経験の蓄積のみならず、訪問先スタッフへの経験の提供にもつながることになる。逆説的ではあるが、実費負担の増加といった
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