35いうことと理解できる。無論、計画プロセスにおいては、関連要因が施設整備の側面だけにとどまるものではなく、外出可能時間などの項目も各種決定に影響を与える項目として考慮されているが、それらについては事業所の視点からは課題は意識されていない。他方、実行プロセスでは結果に影響を与えることが予想される項目すべてが課題として意識されている。この特徴を踏まえた配慮すべき方向性の検討は重要であろう。 重心者は医療的ケアの必要性や、外出時の排泄・食事等の対応可能施設の不足等から外出そのものが極めて制約されるのは橋下ら9、飯島ら10が指摘するとおりであり、今回のインタビュー先でも事業所が遠方への余暇目的での外出を実施している頻度は、一人当たり年間1〜2日程度であった。国土交通省の報告19によれば、食事・社交・娯楽目的の月当たりの平均外出日数は、非高齢者が4.4日、65歳以上が5.1日、75歳以上が4.9日とある。余暇活動の効果は、上述のように多くの研究45678で指摘されるところである。重心者においても、外出を伴う余暇活動は、表 4-11に示すように、多様なメリットを生み出しており、それは重心者自身はもちろん、その家族や、さらには施設職員のモチベーションにまで影響するといった側面もあることが指摘されていた。そもそもの人間の尊厳を維持する上での権利の側面に加え、重心者自身に留まらない効果の広がりの観点からも当該活動の促進の意義は決して低くないであろう。 以下では、この関係性を踏まえた重心者の外出を伴う余暇活動の促進に向けた配慮すべき方向性を検討する。 ※矢印:影響を与える方向 ※網掛け:各種決定や結果(重心者の幸福感等)に影響を与えることが予想される事項 ※破線:施設側で課題の指摘(表 4-10)があった事項 図 4-1 外出を伴う余暇活動の各プロセスとその関係性 19 国土交通省(2017)高齢者の生活・外出特性について, 第1回 高齢者の移動手段の確保に関する検討会 配布資料 施設代表者の意向重⼼者家族の意向計画プロセス施設の⼈的・経済的リソース事業所の枠組み(⽣活介護)実施の決定外出可能時間重⼼者・家族の希望(経済状況含む)重⼼者の⾝体的負担施設のキャパシティ(⾷事・トイレ・医療的ケア)動機の創出プロセス背景的要因(決定に間接的に影響を与える要因)訪問施設・実施内容の決定交通⼿段の決定移動時間の決定移動経路の決定重⼼者のトイレ重⼼者の体調管理施設職員の配慮・対応⾞での利⽤しやすさ(駐⾞場・施設アクセス)施設職員の経験・意識訪問施設スタッフの対応重⼼者の幸福感重⼼者家族の幸福感職員のモチベーション訪問先での体験重⼼者の介護レベル実⾏プロセス効果移動時の体験
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