重度障がい者の外出を伴う余暇活動の企画・実行プロセスと交通配慮事項に関する研究
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33(2)計画プロセス (3)実行プロセス 事業所における当該活動の実施の「動機」は、根源的なものであり、活動内容に与える影響が大きいものと考える。今回インタビューした事業所はいずれも開設当初から当該活動を実施していたが、その「動機」は概ね「経験の提供(施設A)」、「社会との繋がり創出(施設B)」、「家族側での対応の困難さ(施設D)」と三者三様であった。他方、施設Aおよび施設Bは、より施設側の重心者に対する意向(考え)が反映されたもの、施設Cは利用者家族の意向が反映されたものと読み取ることもできる。言い換えれば、施設A、Bは内発的動機、施設Cは外発的動機とでも形容されうる二種類の動機が当該活動の根源にあったと捉えることもできる。今回のインタビューにおいて、これら「動機」の種類の違いが色濃く反映されていたのが、表 4-6に示す外出を伴う余暇活動の外出先選定プロセスにおける重視事項である。この選定プロセスにおいて、施設Aでは、利用者の置かれた実情を踏まえつつ、その能力変化や将来も見据えた提案を重視していた。施設Bでは、利用者が本当に楽しめるかどうかという観点で施設を選定するとともに、障害者権利条約を踏まえ、利用者に「選択肢が与えられていること」という点を意識した提案をすることを重視していた。他方、施設Dにおいても、選定における利用者や家族の意向を伺うプロセスを重視している一方、外出先での排泄・食事等の可否の状況や全体の時間配分などの実務面の指摘が多く挙げられてもいた。あくまでも限られた条件での調査結果であるため、この関係性を一般化する上では更なる追加検証の重要性は言うに及ばないが、少なくとも異なるアプローチによる実施の「動機」が存在しており、その「動機」が計画プロセスに影響を与える可能性があることが示唆されているといえよう。 計画プロセスにおいては、様々な制約条件が影響していた。具体的には人的制約、費用的制約、時間的制約、訪問先施設の制約、移動時の制約である。計画の実施においては、人的リソースの重要性が高い。それは実施準備段階から当日同行する職員の配置までに渡る。今回のインタビューにおいて、残念ながら、実施準備段階における人的リソースの投入状況は把握できなかったが、当該活動の実施当日の人員投入については、インタビューの中で窺い知ることができた。表 4-9にあるように、重心者の場合、車いすを押す関係で利用者一人当たり1名の職員の同行する(施設A、C)、看護師が必ず同行する(施設C)などの施設がある一方、人手不足のためそのような対応ができないとする施設(施設B)もあるなど様々であった。利用者と職員が1対1で応対できないとする施設Bでは、そのような実情が外出できる施設の種類にも影響していることを指摘していることからも、事業所の人的リソースは、実施当日のサポート体制以外にも重心者の外出を伴う余暇活動の多様性などの質的側面にも少なくない影響を与える可能性があることが予想できる。 費用的制約は、施設側、利用者側双方の観点から指摘がされている。施設側としては、表 4-8において施設Aが言及しているように、生活介護事業の枠組みでの収益構

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