2020年度 自主研究概要 報告者: 三村泰広 研究分野 1.暮らしを支える交通、2.都市空間を創出する交通、3.交通の安全・安心 業務類型 1.調査、2.解析、3.政策検討、4.その他 研究題目または 報告書タイトル 重度障がい者の外出を伴う余暇活動の企画・実行プロセスと交通配慮事項に関する研究 研究の背景・内容 ・2016年に障害者差別解消法が施行され、すべての国民が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する取り組みの重要性が高まっている。マイノリティであるが故、これまで社会から見過ごされてきた方々として、重度障がい者がいる。本研究で対象としたいのは、完全介護が必要な重度障がい者の交通である。完全介護が必要な重度障がい者の交通を考える場合、障がい当事者の特性のみならず、介助者の同行が前提となる点を踏まえた交通配慮の検討が必要である。しかし、そもそも重度障がい者の外出特性に関する知見が極めて少なく、外出時の配慮すべき事項に加え、外出が障がい当事者の生活の質(QOL)に与える影響の大きさに関する学術的知見も見られない。本研究は、外出のノウハウを有する施設に協力いただき、重度障がい者の余暇活動のための「外出」実態とその計画・実行プロセスにおける課題を明らかにし、それを踏まえた重度障がい者の外出を伴う余暇活動のさらなる促進に向けた配慮すべき方向性を検討することを目的としている。 研究結果・ 得られた知見等 ・豊田市障がい福祉サービス事業所ガイドに掲載される移動支援・生活介護の施設を対象に、施設の基本情報および利用者、利用者の外出を伴う余暇活動等についてWEBでの入力フォームを通じて調査した。(42事業所に送信、結果、8施設から回答)結果、重症心身障害者(重心)が多い施設の傾向として、外出先の選定には「利用者の身体的負担」「外出先のトイレ等の施設状況」を考慮していること、外出前に「外出先で利用する通行経路を確認」しているケースが多いこと、移動中に「利用者の容態を確認」している傾向にあること、参加後に利用者が「笑顔が多くなった」「より活動的になった」「より発話するようになった」と回答したことなどが示された。 ・重心の方の利用者割合が高く、かつ外出を伴う余暇活動に重心の方が参加したと回答された3施設に対して、外出を伴う余暇活動の開始時期や余暇活動への参加状況、当該活動の実施の動機、外出先の選定プロセス、当該活動を行うにあたっての制約要因等に関する半構造化インタビューを実施した。結果、外出を伴う余暇活動は、単に個人や家族への「楽しさ」だけでなく、一般的経験の乏しい重心者に「経験の提供」を通じた社会とのつながりを創出していること、施設職員はさまざまな下準備、工夫を通じて利用者の良い思い出となることを演出しているものの、ハード的(特に駐車場、トイレ、食事、医療的行為の場所)、ソフト的(重心者への理解のなさ)課題が立ちはだかっていること、施設としての費用・人的サポート面の課題が外出機会の制約になっていること、医療的行為や安全面でのケアは必須であり、その点のサポートが重要になっていること、施設職員のモチベーションが総合的な満足度に通じていることなどが示された。 研究成果 社会への貢献、 報告、技術的特徴等・本研究で明らかとなった重心者の外出を伴う余暇活動に関する先進的取り組みのノウハウや、一連のプロセスの理解と課題の抽出は、市内の生活介護等福祉サービスを実施する施設や介護者にとって参考となり、しいては重心者の生活の質の向上に大きく寄与するものと考える。 所内の担当者氏名・ 担当者 三村泰広 協力先名 神戸工業高等専門学校 小塚みすず准教授、田島喜美恵准教授 問題点・課題・今後の研究予定・その他 ・対象施設の少なさによる成果の一般性(コロナ禍により協力が得づらかった)・施設が実施する余暇活動以外の実態の把握
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