重度障がい者の外出を伴う余暇活動の企画・実行プロセスと交通配慮事項に関する研究
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173-3.考察 豊田市内の32の生活介護事業所を対象に、回答の得られた8事業所の傾向を整理した。今回の回答事業所は、2019年度にいずれも外出を伴う余暇活動を実施しており、半数の事業所では重心者の参加があった。当該余暇活動の決定に関わる事項として、重心者の参加があった事業所は、特に「利用者の家族の希望」(重心者参加=75%指摘、非参加=25%指摘)、「利用者の参加人数」(重心者参加=75%指摘、非参加=25%指摘)を重視していた。また、準備や目的地到着までの配慮事項について、重心者の参加があった事業所は、特に、「外出先で利用する通行経路を事前に確認した」(重心者参加=100%指摘、非参加=50%指摘)、目的地までの移動中に「利用者の容態を注意深く確認した」(重心者参加=100%指摘、非参加=50%指摘)、「交通安全に気をつけて慎重に移動した」(重心者参加=100%指摘、非参加=50%指摘)と回答していた。回答事業所数が限定された結果であるため、これらの結果について慎重に読み取る必要があるが、事業所のマネジメント実態、重心者の障害特性を踏まえれば、これらの結果は概ね妥当な傾向であるように思われる。外出先の決定に際して、利用者家族の希望が重視されるのは、重心者の言語による理解・意思伝達が困難とされる3障害特性を踏まえれば十分予想されうるものであるし、表 3-3に示すように、そもそも看護師など医療的ケアが行える職員が全体の1割程度に過ぎない事業所が多い中で、外出のリスクを利用者家族に伝えた上で判断を仰ぐというのは重要なプロセスの一つであることが想定しうる。このような外出時の対応可能職員数といったマネジメント側の制約条件から、利用者の参加人数が決定の要因の一つとなるのも頷けよう。また、外出先での通行経路の事前確認は、重心者の車いすがストレッチャータイプなど利用者の障害特性に応じた多様な形状であることを踏まえた対応であることが予想されるとともに、橋本ら9の指摘にもあるように、医療的ケアの種類によっては外出時の持ち物が大きくなることの影響も少なくないように思われる。さらに、目的地までの移動中の利用者容態の配慮や安全な移動は、いずれも医療的ケアを前提とする重心者の障害特性が影響していると予想しうる。 対照的に、外出先到着後の配慮事項については、今回の調査からは重心者の参加の有無による特徴的な傾向はみられなかった。このことからも、重心者の外出を伴う余暇活動を行う上では、特に事前準備、到着までの配慮がより重視されていることが明らかであろう。 外出を伴う余暇活動の意義は多くあろうが、角田ら5をはじめ多くの知見が明示するように、まずもって本人の幸福感を高め、活動量を増加させることにあろう。外出を伴う余暇活動は、施設職員目線といった主観的判断ではあるが、利用者の笑顔や活動量を増加させていた。これについて重心者が参加した事業所とそうでない事業所に特徴的な差(ここでは、回答事業所数の少なさを考慮し、50%以上の差としている)は生じていなかった。ただし、今回の調査では、重心者の変化と重心者以外の変化の差異が捉えら

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