重度障がい者の外出を伴う余暇活動の企画・実行プロセスと交通配慮事項に関する研究
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7また、重心者の外出における介護者側からの支援の視点に着眼した研究がいくつか散見される。飯島ら10は、Y県内で在宅の重心児のいる家族(n=7)について、児と家族の生活の状況、児の身体的状況、医療をはじめとして地域社会資源の利用状況についての現状を訪問面接調査により把握している。結果、移動上の課題として、外出はいずれも車を利用しているが、半数以上(4名)からスロープの有無、エレベーターの有無、トイレの状況等により外出場所が制限されてしまうこと、外出の際、呼吸器も一緒に運ばなくてはならず、運転する者と呼吸器を管理する者とが必要となること、2~3か月から半年に1回の定期的検診や、拘縮予防や運動を目的としてのリハビリに週に1~2回通っている方が多く、通院に付き添う時間的負担、さらには寝たきりの場合には移動の補助のため身体的な負担もかかることが指摘されている。 山脇ら11は、東京都および神奈川県の通園型重症心身障害児(者)施設8ヵ所に在籍している重症児(n=113)を対象に、在宅支援サービスの利用の実態とともに、日常生活介助の困難感について把握している。結果、「移動の介助」「入浴の介助」の困難感が強いこと、「親の会の活動やバザーの準備など」、「通園や外来受診の準備」、「福祉手当やサービス利用の手続き」の方が「医療処置」より困難と回答している割合が高いことなどが示されている。 長島ら12は、移動介護従業者養成研修に参加した介護職24名(男6名、女18名、平均年齢36.96±14.7歳)を対象として、(1)支援対象者の有無、(2)支援者の年齢、(3)支援者の疾患、(4)支援の場所、(5)医師、看護師、理学療法士等の医療専門職と連携したいと思うか、(6)外出支援の際に不安に思うこと、(7)現在の居宅介護の際に不安に思うこと、について把握している。結果、支援場所については散歩、買い物、外食等の日常生活の延長上と考えられる場所が多いこと、医療専門職との連携については87.0%が必要と回答したこと、外出支援の際に不安に思うことに関する回答については、介護職の経験年数、経験人数による明らかな差はみられなかった一方で、医療的ケア経験人数による差がみられ、経験あり群(1.64±1.12項目)に比べて経験なし群(2.83±1.4項目)では不安とする回答数が有意に多かった(p<0.05)こと、医療的ケア経験なし群では不安とする項目として「姿勢保持・移乗」、「医療機器の取り扱い・医療的ケア」、「事故対応」、「コミュニケーション」の順に多く、経験あり群では「医療機器の取り扱い・医療的ケア」、「事故対応」の順に回答が多かったことなどが示されている。 以上のように、重心者の外出においては、医療的ケアの内容、ケアが行える人材状況、環境の影響を大きく受け、それによって余暇活動の頻度が少なくなる傾向があるこ 10 飯島久美子, 荻野陽子, 林信治, 矢暗奈美子, 有田尚代, 日原理恵(2005)在宅重症心身障害児のいる家族が地域生活において抱える問題, 小児保健研究, 64, 2, pp.336-344 11 山脇明美, 村嶋幸代(1998)重症心身障害児(者)における在宅支援サービスの利用に関する研究, 日本公衆衛生誌, 45(6), pp.499-510 12 長島 史明, 中川 尚子, 西尾 玲子, 川﨑 麻由子, 稲葉 亜希子, 南條 浩輝, 遠藤 光洋, 前田 浩利(2012), 重症心身障がい児・者の外出支援─介護職の意識とPTが行うべき支援・連携─, 第47回日本理学療法学術大会 抄録集, 39, 2, p. Eb0585

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