重度障がい者の外出を伴う余暇活動の企画・実行プロセスと交通配慮事項に関する研究
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6の総量、強度、期間を評価した。結果、LTPAの総量は、健康の自己評価の高さと段階的かつ連続的な関連性があることを明示している。 Tsunoda, et al.8は、日本人男女における個々の身体活動(PA)と自己申告された健康との間に関連性があるかどうかを、東京都新宿区の明治安田新宿医療センターで実施された健康診断データ(n=13,498)から調査している。結果、余暇のPAは健康状態の改善と関連していたが、仕事のPAに従事している人は健康状態が悪いと自己申告する可能性が高かったこと、女性では、移動時のPAレベルの高さも、健康状態の悪さと関連していたことを明示している。 このように、余暇活動は、個⼈の抑うつ予防や、主観的健康感、幸福感に良好な影響を与える研究が散⾒される。⼀⽅、重⼼者などの障害がある場合の観点からの成果は確認できなかった。 2-2.重⼼者の外出・外出⽀援 そもそもの機会の乏しさもあり、重心者を対象とした外出・移動の実態を把握した研究は多くないものの、一部の先駆的な調査、研究が実施されている。重心者の外出、交流活動の実態を把握したものとして、橋本ら9は、都市部に住まう重症心身障害者(n=126)を対象にアンケート調査を行い、暮らしの基本情報(同居家族、最寄駅までの所要時間、医療的ケアの有無・種類)、日常生活(通所施設の利用施設数や頻度、行き方や所要時間など)、外出活動(外出先として考えられる施設を8つに分類し、それぞれにおける頻度・移動手段)、個人情報(性別、年齢、支援区分、車椅子の種類など)を把握している。結果、医療的ケアレベルが重度になるに従い、店舗、飲食店、散歩・公園、余暇施設の利用頻度が低くなること、経管栄養利用者は持ち歩く設備機器が小さく、少しの外出ならば特に準備物がない一方、吸引・酸素利用者は外出時の持ち物の規模が大きいことが外出頻度に影響している可能性があること、余暇活動は長時間であることや、医療的ケアの対応ができる介助者が限定され、少なくなる傾向にあること、外出先で医療的ケアを行う環境整備が外出頻度に影響(人目のない落ち着いた場所探しに苦労する、わざわざ車まで戻る、多機能トイレが男女別トイレの中に整備されている施設では介助者が異性の場合トイレを利用できない、など)していることなどを明らかにしている。その他、ストレッチャー利用者が公共施設以外の全施設において利用頻度が少ないことや、店舗、飲食店、文化施設において意思疎通が困難な重症者ほど利用頻度が少ないことも明らかにしている。 8 Kenji Tsunoda, Yuko Kai, Naruki Kitano, Ken Uchida, Tsutomu Kuchiki, Tomohiro Okura, Toshiya Nagamatsu (2015), Domains of physical activity and self-reported health, Physical Fitness Research, 113, pp.9-14 9 橋本あおい, 松原茂樹(2017), 重症心身障害者の外出・交流活動に関する基礎的研究, MERA, 39, p.28

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