5既往研究の整理 重心者、もしくは重度の障がいがある方を対象とした研究は多方面でみられるが、ここでは、特に外出や移動といった点、さらに余暇活動という観点からの既往研究を俯瞰していく。 2-1.余暇活動の意義 余暇活動は心身の健康に与える影響など、その意義についてみた研究が多く散見される。例えば、甲斐ら4は、日本人労働者634名から収集した1年間の追跡調査データに基づいて余暇時間身体活動および徒歩通勤と抑うつ症状との関連を調査している。結果、余暇時間の身体活動は、仕事のストレスとは無関係に、日本人労働者の抑うつ症状の予防に役割を果たしていることを明示している。 角田ら5は、余暇活動量が高水準(10METs時/週以上)な者のなかでも,その活動頻度の違いで主観的健康感との関連性が異なるかを2013年5月20日から2014年3月31日に東京都内の健診機関にて人間ドックもしくは健診を受診した13,498名を対象に実施した。結果、男性では,高水準者のなかでも,活動頻度間で主観的健康感が異なり,活動頻度が週2日以下の集中型実践者より,週3日以上の分散型実践者のほうが,主観的健康感が良好であること,女性では,高水準者のなかでは活動頻度間で主観的健康感に差異がなかったことを明示している。 大西ら6は、農村部に居住する424名の高齢住民(平均年齢71.6±4.8SD歳)を対象に,余暇活動を楽しむことと幸福感等との関連を明らかにするため調査を実施している。結果、余暇活動の中では「食事」や「入浴」を楽しむことがPGC主観的幸福感と正の関連を持ち,逆に「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむことは負の関連を示したこと、「動物の相手」を楽しむ者は閉じこもりが少なかったことを明示している。 Galán, et al.7は、余暇時間身体活動(LTPA)と自己評価された健康との間の関係について、2000年から2008年の間に実施されたマドリッド(スペイン)の18~64歳(n=18,058)への多数の活動の頻度と期間に関する質問紙調査結果を用いて、LTPA 4 甲斐裕子, 永松俊哉, 山口幸生, 徳島了(2011)余暇身体活動および通勤時の歩行が勤務者の抑うつに及ぼす影響, 体力研究, 109, pp.1-8 5 角田憲治, 甲斐裕子, 北濃成樹, 内田賢, 朽木勤, 永松俊哉(2016)活動的な集団における余暇活動と主観的健康感の関連―集中型と分散型の実践で関連に違いがあるか?―, 体力研究, 114, pp.35-41 6 大西丈二, 益田雄一郎, 鈴木裕介, 石川美由紀, 近藤高明, 井口昭久(2004)農村地域に居住する高齢者の幸福感に寄与する活動, 日本農村医学会雑誌, 53, 4, pp.641-648 7 Iñaki Galán, Carmen M Meseguer, Rafael Herruzo, Fernando Rodríguez-Artalejo (2010), Self-rated health according to amount, intensity and duration of leisure time physical activity, Preventive Medicine, 51(5), pp.378-383
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