11.はじめに 1-1.研究の背景 高齢運転者の増加に伴い、75歳以上の運転者による死亡事故の割合は増加している。平成29年3月から道路交通法が改正され、それまでの高齢運転者対策をさらに一歩進められることとなった。新たな制度のもとで認知機能検査を受け、認知症の恐れがある第1分類と判断された人の多くが、その後の運転を断念している状況にある1)。 特に地方都市では高齢者のモビリティ確保を自動車が担う場面が多い。生活を送る上で運転が必要不可欠な高齢者運転者の交通安全を確保するかが課題である。 そうした中、日本ではサポカーの名称でADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)の普及促進に国をあげて取り組まれている。しかし、サポカーを利用するためには、新車やその中でも比較的グレードの高い車種を購入して利用する必要があり、広く浸透するにはまだ時間を要する可能性がある。そうした中、比較的安価で使用中の車両に後付けが可能なADAS(後付けADAS)が発売されているが、特に高齢運転者に対する効果等については十分に明らかになっていない。 以上の背景のもと、昨年度の研究では、高齢運転者を対象に実際に後付けADASを利用していただく公道実証実験や、後付けADAS利用者や高齢運転者に対する意識調査を行い、後付けADASの短期的な効果や、普及促進に向けた方策等を明らかにした。しかし、後付けADASの⾧期的な効果や、高齢運転者への普及を促進するための情報提供のあり方については課題として残されていた。 1-2.研究の目的 そこで本研究では、昨年度の研究で課題となっていた、高齢運転者に対する後付けADASの⾧期的な効果を検証すること、および、高齢運転者に普及を促進するための情報提供のあり方を探ることを目的とする。 1 山室智:改正道路交通法施行後1年の状況、月間交通、6、2018.
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