高齢運転者を対象とした後付け型ADASの多様な効果に関する研究
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2019年度 自主研究概要 報告者:西堀泰英 研究分野 1.暮らしを支える交通、2.都市空間を創出する交通、3.交通の安全・安心 業務類型 1.調査、2.解析、3.政策検討、4.その他 研究題目または 報告書タイトル 高齢運転者を対象とした後付け型ADASの多様な効果に関する研究 研究の背景・内容 (背景) 高齢運転者の交通事故対策としてサポカーの普及が待たれるが、高齢者は車の買い替えに積極的でない傾向がある。使用中の車両に後付けが可能な安全運転支援装置(後付けADAS:ここでは警報型後付け安全運転支援装置)が注目を集めている。後付けADASは、サポカーが浸透するまでの高齢運転者対策における切り札と言える。 (目的) 昨年度に実施した研究で残された課題である後付けADASの長期的な効果の検証と、研究で得られた成果を豊田市の高齢運転者に発信するとともに後付けADASの普及促進を図ることを目的とする。 (方法) 後付けADASの長期的な効果を検証するため、昨年度の公道実験参加者を対象に、約4か月間の公道実験を実施した。1か月程度の警報を発しない期間を含む実験期間の走行データを取得し、時系列的な急減速回数の変化を分析した。 また、後付けADASの普及促進については、豊田市でも高齢運転者への後付け安全運転支援装置への補助制度が創設されるなどの状況を踏まえ、普及促進のための情報発信の方法について検討を行った。高齢者クラブの会合等において、後付けADASの説明を行うとともに、情報発信の方法(自分の運転を振り返る情報発信のタイミング)を変えることで、後付けADASの利用意向の差を確認するための調査を行った。 研究結果・ 得られた知見等 ・警報型後付け安全運転支援装置を高齢運転者に貸与する公道実証実験により、前方衝突警報や車線逸脱警報等の警報を発することで、高齢者の運転行動を長期的に変える効果が認められた。具体的には、警報開始後の急減速回数の減少効果を長期的に確認することができた。 ・高齢運転者への警報型後付け安全運転支援装置等の情報発信を通じて、情報提供の方法によって利用意向を持つ人の割合に差がある(p=0.07)ことが確認できた。 研究成果 社会への貢献、 報告、技術的特徴等 *予定含む・今後、本研究で着目した装置だけでなくサポカーの購入補助等の導入が予定されているが、サポカーへの買い替えに踏み切れない高齢運転者に対する選択肢の一つとして警報型後付け安全運転支援装置が有効であることを示すことができた。 ・装置等の普及促進に向けては、製品の周知や補助制度に加えて、情報発信の方法を工夫することでより効果が高まる可能性があることを示すことができた。 所内の担当者氏名・ 担当者 ・西堀泰英、楊甲 協力先名 ・豊田市地域振興部交通安全防犯課、豊田市生涯活躍部市民活躍支援課、豊田市高齢者クラブ連合会、西山長寿会、平井町ことぶきクラブ、あしたの会、竜松会、幸海クラブ、グリーンクラブ、公道実験に参加いただいた井郷地区・猿投台地区・若林地区の高齢運転者の皆さま ・豊橋技術科学大学 松尾幸二郎助教、大同大学 樋口恵一講師 ・本研究の一部は公益財団法人三井住友海上福祉財団の研究助成により行われました 問題点・課題・今後の研究予定・その他 ・高齢運転者の交通安全に対する世間の関心の高まりを受け、政府の高齢運転者に対する安全対策の充実が進められる中、本研究で着目した警報型後付け安全運転支援装置は一般利用者向けの補助メニューには含まれていない。しかし、先進技術による安全運転支援を実現する有用な選択肢の一つであり、今後も機会を見つけて情報を発信していく。 関連論文(2019年度) (当年報掲載ページ) ・西堀、楊、三村、安藤他:後付け安全装置に対する意識と効果からみた交通安全対策のジレンマ、第十四回日本モビリティ・マネジメント会議 ・西堀、楊、三村、安藤他:警報型後付け安全装置による高齢運転者の運転行動変化、公益社団法人自動車技術会2019年秋季大会学術講演会予稿集 ・西堀、楊、三村、安藤他:警報型後付け安全装置の高齢運転者に対する効果及び普及方策に関する基礎的研究、第 60 回土木計画学研究発表会・講演集

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