高齢運転者を対象とした後付け型ADASの多様な効果に関する研究
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21ここでの分析も、期間0における急減速回数よりも各期間の値が減少した人の割合で評価する。分析結果を表2-15、表2-16、表2-17、表2-18に示す。 (2)道路環境の違い まず、市街化区域と市街化区域外の違いに着目すると、市街化が進んでいない市街化区域外の方が、期間1以降に急減速回数が減少する人の割合が多くなる。また、表2-16に示す距離当たりの急減速回数をみると、市街化区域の方が市街化区域外よりも大きな値となっている。期間0と比べた期間3にかけての急減速回数の変化量は、市街化区域(-0.06回/km、23%減)の方が、市街化区域外(-0.02回/km、9%減)よりも減少幅が大きい。 市街化区域外に比べて市街化区域は市街化が進んだエリアが多く含まれており、交差点や沿道の出入り口が多く、自動車交通量や歩行者等通行量が多いために車両や歩行者等との交錯が起こりやすく、走行速度が比較的低い区間であると言える。実際に、平均走行速度は市街化区域外と比べて市街化区域の方が8km/hほど低い(表2-17)。MEの警報のうち閾値超え回数の割合が6割前後で最も大きい低速時前方衝突警報(UFCW)が作動する、30km/h以下で走行する時間の割合は、市街化区域外の56%に対して市街化区域は67%と約10%大きい(表2-17)。そのため市街化区域外と比べて急減速が発生しやすい環境であるといえ、警報により急減速回数を減らす余地が大きい可能性が考えられる。 しかし、期間1以降に急減速回数が減る人の割合は市街化区域よりも市街化区域外の方が多いことから、市街化区域においては市街化区域外と比べて急減速回数を減らす効果が得られる人が限定される可能性がある。この点については今後さらにデータを増やして検討する必要がある。 (3)一運転あたりの走行距離の違い 次に、一運転あたりの走行距離の違いに着目する。1.5km未満、3.0km未満、3.0km以上の対象者数が、9名、10名、12名と異なる理由は、各期間においてそれぞれの距離帯での走行や急減速回数がない場合に対象者を除いて集計しているためである。この分析方法は表4と表5で同様である。 期間1以降に急減速回数が減少する人の割合は、一運転あたりの走行距離が3.0km以上で明確に増加するが、3.0km未満では減少または横ばいである(表4)。距離当たりの急減速回数をみると、一運転あたりの走行距離が⾧いほど、値が大きくなる傾向が認められる。期間0と比べた期間3にかけての急減速回数の変化量は、-0.03回/kmから-0.05回/kmと幅はあるがいずれの距離帯においても減少している(表2-16)。 一運転あたりの走行距離は、移動先が近隣にある都市部ほど短くなることが考えられる。沿道環境別に一運転あたりの走行距離を確認したところ、市街化区域内の方が一運転あたりの走行距離が短い走行が多い(表2-18)。走行距離の違いによる急減速回数の差は、⾧時間運転による疲労によるものよりも、走行する道路環境の違いが関係している可能性がある。

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