4 り,安全運転に悪影響を与える可能性があること8,特に,「水平視野」はその能力低下に対して,運転者が不安を感じづらいこと9などが示されている. 以上からも,高齢者の空間認知特性を把握するうえで,静止視力,水平視野,緑内障等による視野狭窄がみられないかどうかを把握することは重要であるといえよう. また,特に注意すべき点の多い無信号交差点における空間認知においては,視機能に加え,短い時間で多くの空間の状況を認知するために俊敏な首振りや体を曲げるなど自身の身体的動作が可能か否か,すなわち身体機能が重要になるであろうことが想定される.加齢による身体機能の変化について,特に,「柔軟性」「平衡性」「敏捷性」が大きく低下することが知られている1011.柔軟性については,加齢による首の可動域の変化が運転者の知覚範囲に影響を与えるといった研究がみられる1213.他方で,平衡性や敏捷性といった身体機能が空間認知特性とどのような関連性があるかについてみられた研究は筆者らの知るかぎり見当たらない. 以上を踏まえ,本研究では,視線挙動とともに,静止視力,視野といった視機能及び柔軟性,平衡性,敏捷性といった身体機能を把握し,それらの関係性を踏まえた分析を行うこととした.なお,特に身体機能の計測に際しては,高齢者を対象とする場合,テストの「安全性」や被験者の負荷が少ない「簡易性」が重要との指摘14もあることから,比較的計測が容易かつ高齢者にとって安全な方法を採用することとした. 8 警察庁「視野と安全運転の関係に関する調査研究」報告書,2014 9 三村,樋口,安藤,楊:高齢運転者の運転能力と不安感の関係,土木学会論文集D3(計画学),Vol.75 No.5, 2019(再掲) 10 東京都立大学体力標準研究会「新・日本人の体力標準値」,不昧堂,2000 11 木村みかさ:高齢者への運動負荷と体力の加齢変化および運動習慣,Japanese Journal of Sports Sciences,10,722-728,1991 12 T.Dukic, T.Broberg, Older drivers’ visual search behaviour at intersections, Transportation Research Part F: Traffic Psychology and Behaviour Volume 15, Issue 4, July 2012, Pages 462-470 13 Robert B.IslerBarry S.ParsonsonGlenn J.Hansson, Age related effects of restricted head movements on the useful field of view of drivers, Accident Analysis & Prevention Volume 29, Issue 6, November 1997, Pages 793-801 14 三宅他:高齢者の体力測定,総合都市研究,43,1991
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