1 1.はじめに 1-1.背景と目的 高齢運転者は,無信号交差点における出会い頭事故の多さが特徴として知られる.この原因として自動車技術会が発行する「高齢者運転適性ハンドブック」(2005)によれば,相手の車の見落とし,速度誤認,信号・標識の見落とし,小さな移動体の見落としなど,認知機能,特に視力に起因する能力の低下が関与しているものとされている.無信号出会い頭事故においては,視認性の観点からカメラやレーダが主流となっているASV(先進安全自動車)単独による解決に課題が予想されるなかで,交差点空間のあり方について政策論的観点から議論を重ねることが重要である. 図 1.1 我が国の交差点種別・年齢別事故類型の傾向(平成29年)1 本研究は,2018年度に高齢運転者が加害者となる出会い頭事故が発生する無信号交差点の空間特性を定量的に明らかにするとともに,交差点空間特性からみた高齢運転者が加害者となる出会い頭事故の予測モデルを構築している.2019年度は,当該予測モデルより導出された高齢運転者が出合い頭事故の加害者となりやすい空間特性を有する無信号交差点における高齢運転者の空間認知特性について実験室実験を通じて明らかにする. 1 交通事故総合分析センター「交通事故集計ツール」より作成 0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%非高齢者(N=51771)前期高齢者(N=11446)後期高齢者(N=6238)非高齢者(N=73583)前期高齢者(N=16941)後期高齢者(N=8836)信号交差点無信号交差点人対車両正面衝突追突出会い頭右折時左折時車両相互その他車両単独
元のページ ../index.html#5