31 したプログラムを作成することは,高齢運転者自身の能力確認,将来的には運転継続におけるひとつの判断基準として有用となるのではないかと考える. 4-2.本研究の課題 本研究の成果は,予算制約等により限定的な規模(2交差点,5条件(映像),被験者43名)での実験結果にもとづいたものとなっている.本成果を一般化させる上では,被験者,対象空間の多様化を含め,実験規模の拡大は不可欠である.また,視野角など視機能に関わる身体機能については,今回の実験環境では適切に取得できなかった可能性がある.これらの精度向上も結果の妥当性を高める上で重要であると考える. 今後の研究の発展性として,注視傾向の詳細分析および,注意の実態との関連があろう.本研究では,高齢運転者の空間認知特性として視線移動距離を指標とする分析を中心に展開したが,本指標は単位時間当たりの空間全体における認知状況の代替指標としては機能するものの,安全上重要となる任意の範囲(例えば,枝方向にある横断歩道の範囲など)における注視傾向を把握できるものではない.よりきめ細やかな対策検討を進める上において,このような注視点の傾向分析の重要性は高いものと考える.さらに,注視と認知は同一概念ではなく,注意しつつ注視することで認知されると考えるのが一般的であろう.本研究の調査では,映像視聴時の視線挙動に加えて,注意を司る前頭前野の脳活動の実態も把握している.これらの分析を引き続き継続していくことで,より有益な成果が導出できるものと考えている.
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