空間認知特性に着眼した高齢運転者が加害者となる出会い頭事故対策に関する応用的研究
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28 表 3.8 視線移動距離の要因分析(映像E) E 徐行前 徐行中 停止中 停止線から隅切り 交差点進入後 定数項 187.13 * 718.22 ** 592.44 * 1825.33 * 345.58 * 個人属性 男性ダミー - - - - - - - - - - 高齢ダミー - - 200.00 - - - - - - 視力 静止視力(両眼平均) 79.49 - - 253.95 - - - - 視野角(両眼) - - - - - - -7.67 - - 柔軟性 長座体前屈 2.20 + - - 6.67 + 7.03 + - - MMD - - - - - - -6.00 - - 平衡性 開眼片足立ち -0.50 2.12 + - - - - - - 敏捷性 ステッピングテスト(片足) - - - - -8.04 - - 3.62 棒反応時間 -3.03 -17.03 * -12.42 + -18.03 ** -6.85 + サンプル数 31 調整済み決定係数 0.09 0.18 0.09 0.36 0.22 ***:p<0.001, **:p<0.01, *:p<0.05, +:p<0.1 次に優先道路の映像についてみる.モデルの精度を示す調整済み決定係数をみると,総じて低く,最も高い値でも映像Cの「通過前」のR2=0.23であった.説明変数が選択されなかったモデルも散見され,優先道路の視線移動距離は,個人属性及び身体機能のみでは説明がしづらいものであることがわかる. モデル精度が低いという結果に留意しつつ,ここからは,特に有意となった個別要因の傾向を見る.まず個人属性に着目すると,「高齢ダミー」では,「通過前」(映像C,p<0.05),「通過直前」(映像D,p<0.05)において有意であることがわかる.推定値の符号からいずれも当該区間で高齢運転者の視線移動距離が少ないといった傾向を示している. 次に身体機能の視力をみると,「静止視力」では,「通過前」(映像C,p<0.05),「通過直前」(映像D,p<0.1)において有意もしくは有意傾向であることがわかる.推定値の符号からいずれも当該区間で静止視力が高いと視線移動距離が少ないといった傾向を示している.優先方向の走行時では進行方向の情報を収集するための視線挙動が中心となることが予想され,静止視力が高いほど,遠方の進行方向の情報が収集しやすくなるため,このような傾向が導出された可能性がある. 次に,柔軟性をみると,「長座体前屈」では,「通過直前」(映像C,p<0.1)において有意傾向であることがわかる.長座体前屈の値が大きい,すなわち柔軟性が高いほど視線移動距離が多いという傾向にある. また,敏捷性の「ステッピングテスト」では,「通過中」(映像C,p<0.05)において有意であることがわかる.推定値の符号から当該区間でステッピング回数が多い,すなわち下半身の敏捷性が高いと視線移動距離が多いといった傾向を示している. 以上のように,加齢により低下する身体機能と視線移動距離に関係性があることが明示され,これらを踏まえた対策の重要性が示唆されたといえよう.

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