26 モデルの精度を示す調整済み決定係数について,まず非優先道路で一時停止のある映像をみると,映像Aでは「徐行中」(R2=0.56),「停止線から隅切り」(R2=0.38),映像Bでは「徐行前」(R2=0.49),「徐行中」(R2=0.41),「停止中」(R2=0.50),映像Eでは「停止線から隅切り」(R2=0.36)の値が比較的高いことがわかる.複数の映像で値が高かったのは「徐行中」(映像A,B),「停止線から隅切り」(映像A,E)であり,これらの区間は他の区間に比べて個人属性もしくは身体機能によって視線移動距離が説明しやすい,すなわちそれらの影響を受けやすい区間であると判断できる.他方で,「交差点進入後」は,いずれの映像でも調整済み決定係数は低く,当該区間は個人属性や身体機能では説明しづらい,それらの影響を受けづらい区間であると判断できる. ここからは,決定係数の比較的高かったモデルに着眼しながら個別要因の傾向を見る.まず個人属性に着目すると,「男性ダミー」では「徐行中」(映像A,p<0.05),「停止中」(映像B,p<0.01)において有意であることがわかる.推定値の符号はこれら2区間で異なっており,「徐行中」に少なく,「停止中」に多いという傾向にある.次に「高齢ダミー」では,「停止中」(映像B,p<0.05),「停止線から隅切り」(映像A,p<0.05)において有意であることがわかる.推定値の符号からいずれも当該区間で高齢運転者の視線移動距離が少ないといった傾向を示している. 次に身体機能の視力をみると,「静止視力」では,「停止中」(映像B,p<0.1),「視野角」では,「徐行前」(映像B,p<0.01)において有意であることがわかる.推定値の符号からいずれも当該区間で視力が高いと視線移動距離が多いといった傾向を示している. 次に,柔軟性をみると,「長座体前屈」では,「徐行中」(映像B,p<0.1),「停止線から隅切り」(映像E,p<0.1)において有意であることがわかる.推定値の符号はこれら2区間で異なっており,長座体前屈の値が大きい,すなわち柔軟性が高いほど視線移動距離が「徐行中」では少なく,「停止線から隅切り」では多いという傾向にある.他方で,MMDは映像Bの「交差点進入後」で有意とはなっているが,先にふれたように,当該モデルの精度は高いとはいえず(R2=0.25),解釈に留意が必要である. 次に平衡性の「開眼片足立ち」をみると,「徐行前」(映像B,p<0.05),「徐行中」(映像A,B,p<0.1,p<0.01)において有意であることがわかる.推定値の符号からいずれも当該区間で平衡性が高いと視線移動距離が多いといった傾向を示している. 最後に敏捷性をみると,「ステッピングテスト」では,「徐行前」(映像B,p<0.05),「徐行中」(映像B,p<0.05),「停止線から隅切り」(映像A,p<0.05)において有意であることがわかる.推定値の符号からいずれも当該区間でステッピング回数が多い,すなわち下半身の敏捷性が高いと視線移動距離が多いといった傾向を示している.また,「棒反応時間」では,「徐行前」(映像B,p<0.01),「徐行中」(映像A,映像B,p<0.01,p<0.1),「停止線から隅切り」(映像E,p<0.01)において有意であること
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