3 1-3.既往研究及び豊田市行政計画の整理 1-3-1.既往の研究の整理 農地転用に着目した研究としては、原田(1976)1の戦後東京都内の農地転用について分析し、市街化に伴う農地の売買・転用の実態を明らかにすることで、都市近郊における農村変貌の法則性を解明する手がかりを得ることを目的としている研究、藤井・渥美(2008)2の長野市の都市縁辺部において農振除外、農地転用、開発許可の動向を調べ、開発許可と関係性のある要因の抽出と開発許可の空間的特性を把握し、土地利用の規制における問題点と課題を検討している研究、中原・出口(2008)3の農地転用の経年変化や累積、新設道路周辺の農地転用に関する実態を把握し、、農地転用時の周辺土地利用状況や新設道路を含む主要施設との位置関係を説明変量とした判別分析により、転用目的やバイパス供用開始からの経年数ごとの農地転用の誘発要因と農地転用傾向を明らかにしている研究、有田・宮沢(2009)4の市独自の農振除外基準を策定している静岡県浜松市を対象に、規制下のもとで行われた農振除外及び農地転用について整理し、その効果を検証している研究、武山ら(2018)5の線引きを廃止した西条市を対象に、線引きの廃止は2種農地の農地転用に大きく影響していること、大規模店舗への転用や小規模住宅への転用が増加すること等を示した研究等、戦後から現在まで多くの研究が行われている。 また、筆者ら(2017)6は線引きを廃止した香川県高松市を対象に、線引きを廃止したことによる農地転用に対する要因の変化を確認した上で、線引き都市である山口県防府市に高松市の線引き廃止後の要因結果をあてはめ、防府市が線引きを廃止した際の線引き廃止シミュレーションを実施した研究がある。 このように、農地転用は主に都市の郊外化・スプロール化を分析する際に使用されることが多く、本研究においても、都市の郊外化を確認するために、農地転用の動向について分析する。 1 原田敏治(1976):千葉県市川市における市街化と農地転用、地理学評論、49巻9号、pp.616-631 2 藤井良夫、渥美浩和(2008):地方都市縁辺部における都市開発と農地転用の動向、農業農村工学会論文集、No.253、pp.61-70 3 中原慎一郎、出口敦(2008):田園地域における新設道路周辺の農地転用のパタンと誘発要因に関する研究.、日本建築学会計画系論文集、第73巻、第627号、pp.1015-1022 4 有田博之、宮沢慎吾(2009):浜松市独自の農振除外基準による土地利用秩序形成、農業農村工学会論文集、No.264、pp.27-34 5 武山絵美、谷川沙希、才野友輝(2018):都市計画法に基づく線引き廃止が農振法・農地法に基づく農地点に及ぼす影響-愛媛県西条市を事例として-、農業農村工学会論文集、No.307(86-2)、pp.I_205- I_215 6 坪井志朗、鵤心治、小林剛士、宋俊煥(2017):線引き制度廃止都市の郊外部における開発ポテンシャルに関する研究、日本建築学会計画系論文集、第82巻、第740号、pp.2619-2628
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