1 1.はじめに 1-1.研究の背景と目的 地方都市においては、市街地の拡散、急激な人口減少、高齢者人口の増加が懸念されており、健康で快適な生活や持続可能な都市経営の確保が重要な課題となっている。 これらの課題に対応するために、平成26年に立地適正化計画のガイドラインが示され、都市全体の構造を見直し、『コンパクトシティ・プラス・ネットワーク』の考え方の基、持続可能な都市構造の構築を目的としている自治体が多い(豊田市は2019年3月策定)。 立地適正化計画や都市計画マスタープラン等の行政計画において目標とする将来像は描かれており、各地域に適した将来像に向けた事業・計画も進行している。しかし、目標とする将来像を構築していくには、行政のみならず、様々な分野の専門家、地元住民、民間企業が協力し合い、共通した将来都市構造のイメージを持つ必要がある。 本研究では、都市将来像を人口分布と交通動向から推計したうえで、様々な将来都市構造を可視化できる「将来都市構造可視化シミュレーションツール」の開発を行い、地域特性を考慮した将来都市構造を検討するツールを構築することで、専門的な知識を有さない市民や企業とも、共通した将来都市構造のイメージを持てる仕組みを模索することを目的とする。 1-2.昨年度の研究の整理 本研究は2018年度から継続して実施している。2018年度には、コンパクトシティに関する既往の研究や行政計画について整理した上で、人口分布や交通分野から見た将来都市構造を構築し、「将来都市構造可視化シミュレーションツール」の試験的開発を行った。 2019年度は、2018年度で課題となっていた、パーソントリップ将来都市構造の精査について行ったうえで、複数の将来都市構造可視化シナリオを設定し、将来都市構造可視化シナリオに基づいた将来都市構造可視化シミュレーションツールの高度化を行う。 1-3.研究の方法 はじめに、将来都市構造の詳細を分析するために、100mメッシュ将来人口分布を構築する。また、パーソントリップ調査から鉄道駅の利用者数の将来都市構造についても推計し、100mメッシュ将来鉄道利用者分布を構築する。 次に、将来都市構造を検討するための基盤となる、将来都市構造可視化シナリオを複数作成し、シナリオに基づいた将来都市構造を可視化する。その際、人口や鉄道利用者数が行政の目標値に達しているかどうかを併せて確認する。 次に、設定する目標年や目標人口密度等を任意的に変更、設定でき、様々な将来都市構造をシミュレーションできる「将来都市構造可視化シミュレーションツール」を構築する。
元のページ ../index.html#6