自転車の通行空間整備過渡期における道路政策のあり方に関する研究
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3 団の中に、正答を行う方が一人でもいる場合、同調による誤答率は大きく下がるという。 図 1-1 アッシュの線分実験2 同調には、大別して、多数者意見に本心から同意して生じる「私的受容による同調」と、本心では多数者意見に同意していないが、行動では表面上多数者に合わせる「公的受容による同調」の2種類に分類されるとされる3。人間は正しい判断をしたいと願う傾向があり、個人が多数者意見を正しいものだと受け取る場合、「私的受容による同調」が生じやすい。他方、人間は周囲の人々から好かれたい、嫌われるのは避けたいと願う傾向があり、少数者が、多数者意見の規範を読みとり、集団の斉一性圧力を感じるとき、本心では不同意ながらも、周囲の人々に好かれたい、もしくは嫌われたくないという思いから追従してしまう「公的受容による同調」が生じやすい。 ここで、学生の自転車利用について振り返ると、学生の多くは「(ルールを)知ってはいる(理解している)けど、守らない」ということであった。このルールは道路交通法という法律に準ずる規範であることから、「正しい」ものであるし、そのように学生も理解をしているはずである。すると、正しい知識を有する大半の学生には正しい判断をしたいという「私的受容による同調」のポテンシャルがあると考えてよい。 また、走行箇所選択において極めて大きな影響を与える要因、とりわけ安全性の扱いは重要であろう。検討を進めるに際しては、安全性による影響を極力排除するといった配慮が不可欠である。以上のような理由から、本研究では、「同調」アプローチの有効性について、利用者の安全性が担保されていると考えられる区間で検討することとした。 2 Asch,S.E. Opinions and Social Pressure. Scientific American, 1955, 193(5), pp.31-35 3 山岸俊男:社会心理学キーワード、有斐閣双書、2001.1

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