48 きた。しかしながら、ミクロ的な現象としての「同調」の「瞬間」はほとんど観測できなかった。また、今回の実験では「現象」の観測はできたものの、その現象が生じた「理由」までは特定できなかった。すなわち、「同調」と思わしき事象が、果たして同調によるものなのか、何らかの別の理由によるものなのかが判別できなかった。この判別には「同調」したと思わしき道路利用者に対して意識調査を実施する、もしくは、実験室実験などで、条件統制を行った中で行うといった手法を取ることになる。なお、前者はそもそもの現象の計測が困難であることからも、後者を中心とした方法の検討が現実的であるかもしれない。 同調の実験を通じて、自転車通行指導帯のような空間での車道走行率の上昇は、場合によって歩道の安全性を低下させる可能性も示唆された。すなわち、自転車通行指導帯の混雑、もしくは円滑性の低下によって、走行速度の速い自転車が追い抜きのために歩道に乗り入れてしまうという現象である。そのような理由で歩道に乗り入れた車両は、追い越しのために歩道上で自車の速度を加速させる可能性が高い。暫定形態整備のような空間では、車道側に膨らんで追い越すといったことが自車の安全上忌み嫌われるケースが多数であり、このような「追い越し」といった状況を踏まえた空間整備の在り方も検討していくことが、地域の自転車利用を推進、促進させていく上では重要であるだろう。 謝辞 本研究の遂行にあたり、豊田市立朝日丘中学校、豊田西高校、豊田東高校、豊田市建設部建設企画課、豊田市社会部交通安全防犯課、学校教育課、豊田市交通安全学習センターの関係者の皆様に多大なるご支援、ご示唆を頂いた。また本研究は公益財団法人三井住友海上福祉財団の研究助成を受けた。ここに記し、感謝の意を表す。
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