47 阻害させる場合が生じることなどより、必ずしも車道走行率の上昇には寄与しなかった。このサクラによる車道通行率の上昇は、時間的継続傾向が確認され、実験終了後1ヶ月後であっても車道通行率が実験時と同等以上であった。加えて、同調行動の発生条件などのメカニズムに関する詳細分析を実施した結果、同調と推察される事象は、単路部よりも交差点部でより多く発現していた。しかし、今回の実環境下での実験では、一貫した多数派を作り出すことができなかった場面が多く、詳細な発生条件に関するメカニズムの理解までは到達できなかった。 5-2.自転車通行空間の適正利用に向けた政策課題の検討 現在、豊田市で整備されている自転車通行空間の多くは、整備過渡期ということもあり、暫定形態である法的拘束力のない自転車通行指導帯(矢羽根)である。今回、社会心理学的アプローチの実施のため、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」(平成28年7月)で提示される整備形態の選定基準を参考にしつつ、比較的安全性が高いと考えられる空間を選定するための評価を実施したが、当該ガイドラインの基準に到達できていない箇所も少なからず散見される結果となっている。このような実態は、矢羽根を利用しない学生から「道路が良くない」や「怖い・危険だから」という意見が多数を占めたことからも、適正利用に向けた大きな物理的ハードルとなっているのは疑いようがない。暫定形態から確かな安全性が確保された「完成形態」への早期脱却に向けた政策努力は、当該課題の最重要ポイントである。 他方、自転車通行空間の適正利用に向けては、利用者側に対するアプローチも重要である。豊田市で学生を対象に精力的に取り組む講習会スタイルの教育は、学生への自転車適正利用に係る正しい知識の習得に少なくない効果を与えている。今年度は、昨年度と異なり、全校生徒を対象に講習を行う学校に調査を依頼したが、学年を追うごとに学生の正しい知識は強化されていた。全学年を対象に講習を実施している学校は豊田市では少なく、この成果を踏まえた講習対象の検討を加えることは、より正しい知識を備えた学生を育てる上でも有用であるかもしれない。 また、講習の結果は、知識の獲得・定着のみならず、学生の行動にも反映され、歩道走行であっても車道寄りを通行する割合が高まるなどの傾向が観察された。ただし、効果が短期的に減衰してしまうなどの効果の限界も同時に観察された。昨年度も同様の課題を取り上げてはいるが、講習スタイルでの取り組みは知識の伝達には有効に寄与するが、その実行プロセス段階においては、講習スタイルを補完する取り組みが重要性を増すものと考えられる。 この補完的取り組みとして、今年度は、車道走行をする自転車を意図的に「多数派」にし、利用者の車道走行の「同調」を引き出す実験を実施した。この手法により、車道走行率が上昇するなど、マクロ的には期待通りの効果が確認され、いくつかの成立のため条件も確認で
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