自転車の通行空間整備過渡期における道路政策のあり方に関する研究
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46 5.自転車通行空間の適正利用に向けた政策課題の検討 5-1.本研究で得られた主な知見の整理 (1)走行実態・意識の影響要因の把握 全学年が講習会を受講している学校を対象とし、自転車講習会前後の自転車通行位置の変化や意識の変化について分析した。 意識面を分析するためのアンケート調査では、自転車の通行空間に関する内容はほかの内容と比べ印象に残り難く、より効果的な講習方法を模索する必要があること、学年が上がるにつれて自転車通行ルールの認知度が向上しており、継続的に講習会を行うことで、知識が定着する傾向にすること、青色矢羽根の空間を通行しない理由として、「道路が良くない」や「怖い・危険だから」と回答している生徒が多く、自転車が安全に車道を通行することができる道路を整備することが必要であること等を指摘した。 また、実態を確認するための自転車交通流調査では、講習会によって、車道走行率は増加しなかったものの、歩道の車道寄りを通行する自転車が増加したこと、並走する自転車の割合が減少したこと等、講習会によって安全な自転車利用が増加していることが分かった。また、学年別にみた場合、1年生の方が講習会直後の歩道の車道寄り通行率が増加しているものの1ヶ月後には講習会前程度の車道寄り通行率に戻っている一方で、3年生は講習会前後及び1か月後においても歩道の車道寄りの通行率が高いことを示した。 (2)自転車通行空間の整備と利用のギャップに関する整理 自転車通行空間の道路構造及び交通実態を把握し、自転車通行空間の中でも安全性が高いにも関わらず、自転車空間適正利用率の低い区間を選定した。選定にあたっては、安全性を対車両、対歩行者という視点に着眼した物理的乖離、回避容易性、歩行者衝突回避、車両危険性といった4つの指標により自転車通行空間の評価を行なった。また、比較的安全性の高さが確保されていると考えられた10の区間において交通実態を把握し、ある程度の自転車通行量があり、かつ自転車空間適性利用率の低い5区間を選定した。 (3)利用率が低い自転車通行空間における社会心理学的アプローチ 社会心理学的アプローチを用いて、自転車の適正利用を促す実証実験を行い、利用率の変化について分析した。(2)にて選定した5区間のうちの1区間を対象に同調を誘発する車両(サクラ)を走行させた結果、車道走行率の上昇が確認された。この傾向は走行する車種と対象によって傾向が異なり、一般ではママチャリの車道走行、学生ではスポーツタイプ(ロードバイク)の車道走行台数の増加により、より顕著な車道通行率の上昇が確認された。他方、サクラの増加、すなわち多数派の鮮明化は、自転車の車道走行の円滑性を

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