45 4-4.まとめ 同調実験によって得られた知見を仮説の検証、課題、今後の分析方針案として整理する。 4-4-1.仮説の検証 〇仮説1(同調は自転車の種類に影響を受ける) 一般ではママチャリ、学生ではスポーツタイプの増加による車道走行率の上昇が顕著であった。 〇仮説2(同調は多数派の数差に影響を受ける) サクラの増加、すなわち多数派の数差の鮮明化は、自転車の車道走行の円滑性を阻害させる場合が生じることなどより、必ずしも車道走行率の上昇には寄与しなかった。 〇仮説3(同調は空間的拡大・時間的持続が生じる) 実証実験中と比べ、車道通行率が同等以上であり、効果の持続が確認できた。 4-4-2.課題 〇サクラ自転車による通行阻害 サクラ自転車を15km/hで走行させ、前車と5秒間程度の間隔をあけて走行させた。そのため、後方から来る車道走行の通行を阻害し、一度は車道走行したものの、すぐに歩道走行に戻ってしまった自転車を確認した(特に、実験初期段階に多発)。一般自転車(ママチャリ)では15 km/hは遅くないものの、スポーツタイプの自転車としては、15km/hは遅いため、特にスポーツタイプの自転車の走行を阻害したことが考えられる。今後、実際に他地域に応用する際には、より柔軟な運用を検討する必要がある。 〇曜日・天候の影響 今回、2週間連続でデータを取得したことより、自転車の通行における曜日や天候の影響の大きさが浮き彫りになった。実証実験を行う前に、少なくとも実証実験場所が曜日の影響が大きいかどうかを把握しておくことが重要である。 〇同調の限界 同調効果を与えるためには、その行動以外を行う人がいない環境が最もよく、1人でも別の行動をしていると、同調効果は低くなってしまう。今回の実証実験では、サクラ自転車を走行させることで、自転車通行空間を適正利用する自転車が増えているが、歩道を通行する自転車の方が多いことには変わりない。同調効果をより発揮させるためには、歩道を通行する自転車よりも車道を通行する自転車が極めて多い環境をつくることが重要かもしれない。
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