1 1.はじめに 1-1.背景と目的 自転車は、都市内短距離移動における有力な交通手段のひとつである。近年は環境や健康面でも効果があるとの期待から、その位置付けが高まっており、平成29年5月には自転車活用推進法が施行された。しかし、昭和40年代の自転車の歩道通行を可能とする交通規制の導入以降、車両としての自転車の位置付けや通行空間が曖昧なままに道路基盤が整備され、自転車と歩行者の交通事故の増加などの弊害が生じてきた。この解消に向け、警察庁及び国土交通省では平成23年以降、自転車の車両としての位置付けや通行空間のあり方に関するガイドラインの作成や法改正等を実施し、地方自治体ではそのガイドラインに従った対応を進めている。しかしながら、このような整備過渡期であるがゆえか、整備された空間を利用せず、これまでの慣習に従った通行を維持する自転車利用者も多いなど、利用と空間のギャップが生じている。 本研究では、2018年度の利用実態と教育実態から自転車通行空間の在り方に関する研究の追加調査を実施するとともに、特にソフト面からの試みとして、自転車の車道通行について構造的課題がみられないにも関わらず利用されない自転車通行空間において、社会心理学の知見を援用し、自転車の適正利用率の向上を目指すことを目的とする。 1-2.昨年度の研究成果と課題を踏まえた今年度の方向性 1-2-1.昨年度の研究成果 昨年度の自主研究である、「自転車の通行空間整備過渡期における道路政策のあり方に関する研究(2018年度)」では、自転車車道通行を教育的側面から自転車講習会の効果を定量的に把握し、空間的側面から車道通行率に影響を与える道路構造や周辺環境の要因を分析した。 結果、自転車通行ルールの認知程度に差はあるが、中でも自転車通行空間は特に知られておらず、他方で、自転車通行空間は自転車講習における配分時間が少なく、受講者の印象に残りづらい状況にあることがわかった。さらに、講習後に生徒は「ルールを遵守する」としながらも、一部改善は見られたものの車道走行や歩道走行時の徐行といったルールへの対応に改善傾向は確認できなかった。 1-2-2.昨年度の課題を踏まえた今年度の方向性 (1)精度の向上 昨年度の走行実態調査では、豊田市における自転車講習の時期が年度初めに行われる事
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