自転車の通行空間整備過渡期における道路政策のあり方に関する研究
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19 2-5.おわりに 本章では、自転車の通行空間が整備されているもののその利用率が低いことを背景に、中高生を対象とした自転車講習会を通じて、自転車の通行空間に関する教育効果について検証した。 意識面を分析するためのアンケート調査では、自転車の通行空間に関する内容はほかの内容と比べ印象に残り難く、より効果的な講習方法を模索する必要があること、学年が上がるにつれて自転車通行ルールの認知度が向上しており、継続的に講習会を行うことで、知識が定着する傾向にすること、青色矢羽根の空間を通行しない理由として、「道路が良くない」や「怖い・危険だから」と回答している生徒が多く、自転車が安全に車道を通行することができる道路を整備することが必要であること等を指摘した。 また、実態を確認するための自転車交通流調査では、講習会によって、車道走行率は増加しなかったものの、歩道の車道寄りを通行する自転車が増加したこと、並走する自転車の割合が減少したこと等、講習会によって安全な自転車利用が増加していることが分かった。また、学年別にみた場合、1年生の方が講習会直後の歩道の車道寄り通行率が増加しているものの1ヶ月後には講習会前程度の車道寄り通行率に戻っている一方で、3年生は講習会前後及び1か月後においても歩道の車道寄りの通行率が高く、アンケート調査と同様に継続的に講習会を受講していることで、自転車の安全な利用している生徒が増加していることを示した。 本研究によって、自転車講習会が自転車の安全利用の向上に少なからず影響していることを示したものの、講習会による効果は定着度が低いこと、自転車通行空間に関しては、他の自転車ルールと比べ認知度が低いこと等の課題も改めて認識された。

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