1 1. 序論 1-1 研究背景及び目的 豊田市は「移動円滑化」の実現に向けて、道路整備等のハード対策や、交通需要マネジメントのようなソフト対策を推進している。そのなか、対策効果に対する簡易的な指標を用いた評価手法が求められている。当研究所の先行研究1)では、バスプローブデータを用いた道路渋滞状況の評価指標を構築し、トヨタ自動車の稼働有無や天候による影響を明らかにしたが、当該評価指標を用いて、移動円滑化施策効果の評価までに至らない問題点が挙げられる。また、豊田市では、おいでんバスのプローブデータが蓄積されており、道路渋滞状況やバス路線運行の信頼性などの分析にも活用することが期待されている。 そこで、本研究は長期間にわたるおいでんバスのプローブデータを用いて、バス運行路線に含まれる道路区間別の旅行時間や速度の平均値やそれらの変動を把握することで、豊田市の道路渋滞分析を行うことを目的とする。なお、本研究では豊田市で実施した道路円滑化の対策を評価するための簡易的な指標を検討する。 1-2 研究特徴 本研究の特徴は次のように挙げられる。 まずは、本研究は先行研究1)を踏まえた自主研究テーマであるため、研究遂行をするための環境が整っている点である。先行研究では、バスプローブデータ解析のノウハウを習得し、その成果としては、おいでんバスプローブデータを用いて、通勤時間帯における一部路線のバス停留所間の旅行時間や速度等を把握した。本研究では、おいでんバスの各路線の運行時間帯のすべてのバス停留所間の旅行時間を解析する方法を構築する。 そして、バス停留所間の旅行時間への分析にとどまらず、代表的なバス停留所を対象としたバス車両の定時性も分析する点である。2016年1月から12月までの一年間のバスプローブデータを入手したため、先行研究で実施した森バス停留所から豊田本町バス停留所までの旅行時間への分析を踏まえて、新たに代表的なバス停留所を対象としたバス車両の定時性を把握する。つまり、時刻表と比較して、バス運行車両の遅延状況を把握することである。バス路線運行サービスを評価するための指標を使えるようにする。 最後に、プローブデータ処理技術に精通する外部研究者と連携し、共同研究の形で業務を遂行し、国内外の学会で研究成果をアピールすることを目指す点である。本研究は、当研究所で蓄積している交通系のビッグデータを活用しながら、研究成果をさらにアピールするため、事前に外部研究者と協議し、お互いの強みを発揮できるような共同研究を遂行することが決定した。とくに、プローブデータの解析技術や旅行時間分析の最新動向について、外部共同研究者では中華人民共和国西南交通大学の曹鵬先生から、情報提供やアドバイスを頂いたことがある。 1) 公益財団法人豊田都市交通研究所,「豊田市TDM施策を評価する簡便な指標の研究」自主研究報告書,2017年3月.
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