電気自動車シェアリングの利用意識に影響を及ぼす要因分析
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1 1. 序論 1-1 研究背景及び目的 日本では提供車両台数や拠点数の増加に伴う利便性拡大や認知度向上により、カーシェアリング市場は都市部を中心に拡大基調にあり、2020年には2012年比5倍に拡大するとの報告がある1)。カーシェアリングの現状をみてみると、ほとんどの使用車両はガソリン車である。一方で、比較的に大規模な超小型電気自動車(以下、電気自動車をEVと称する)の事例がみられるが、乗用車型EVシェアリングはあまり進んでいない現状にある。 2018年度から、航続距離400キロを有する乗用車型EVの販売が開始し、このようなEVは日常利用のニーズに十分対応できると考えるため、シェアリング利用車両としての受容性が高くなる可能性がある。また、乗用車と比較した走行コストやメンテナンス費用の低下により、カーシェアリングの事業者にとっても、乗用車型EVを買い替えることには経済的なメリットがある。さらに、自動車関連メーカーやカーシェアリング事業者はEVとシェアの特性を活用したビジネスモデルを構築している。その代表例としては、日産自動車が展開しているe-シェアモビの事例が挙げられ、利用車両にはEV式のリーフ、ノート、セレナが含まれる。こういったEVシェアリング事業は日本全国の都道府県を対象に事業規模を拡大している。一方で、利用者の視点から、このような航続距離が長い乗用車型EVはカーシェアリング車両として利用したいかどうかが不明瞭である。例えば、従来のガソリン乗用車と比較して、乗用車型EVの運転感覚は若干異なることや、EVの航続距離に対する不安を持つことから、シェアリング車両として利用したくない可能性がある。 そこで、本研究は日本国でのカーシェアリング事業を展開するための知見を得るため、カーシェアリングに関する国内や海外の最新動向を整理するとともに、一般市民を対象とした意識調査の実施を通じて、超小型EV、乗用車型EV、ガソリン車といった車両に対する利用意向を明らかにすることを目的とする。なお、利用者のカーシェアリングの利用意向を把握するにあたり、最近展開している地方部の観光地におけるカーシェアリングを分析対象に絞り込む。本研究で実施した調査結果は、日本国におけるカーシェアリング事業を推進するための参考資料として活用できるようにする。 1-2 研究特徴 本研究の特徴は次のように挙げられる。 まずは、本研究はカーシェアリングについての研究文献を調査するにあたり、対象車両を超小型EV、乗用車型EV、ガソリン乗用車に分けて整理する点である。日本国は海外と比較して、乗用車型EVの普及があまり進んでいないが、超小型EVの普及が進んでいる現状にある。今後は、超小型EVの普及を加速させるとともに、乗用車型EVが普及できるような方策を探るため、文献調査を実施する。 1) 株式会社三井住友銀行, 「自動車及び関連産業の将来像」発表資料, https://www.smbc.co.jp/hojin/report/ investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport052.pdf

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