17 3. 地方部の観光地におけるカーシェアリングの利用意向に関する調査結果 本章では、地方部の観光地におけるカーシェアリングの利用意向に関する調査結果を説明する。 3-1 調査背景・目的 最近、自動車関連メーカーやカーシェアリング事業者はEVとシェアの特性を活用したビジネスモデルの構築に乗り出した。各社が持つEVやシェアリングサービスの普及を後押ししつつ、新たな移動体験を提供することが狙いである。最近、観光地におけるEVシェアリングの事例が見られ、超小型EVだけでなく、乗用車型EVの事業も展開されている。これらの取組は観光地における車両共用を通じて、流入車両による道路渋滞緩和や駐車場不足問題の改善につながることがあるではないかと考える。また、ガソリンスタンドの密度が低い観光地でも、宿泊施設で充電可能なEVを導入すれば、公共交通機関を利用してきる観光客にとって、現地で自動車での移動手段も可能であるため、そのメリットが大きいため、観光地におけるEVシェアリングの普及が期待されている。なお、既存のレンタカーとカーシェアリングを比較すると、メリットとしては次の3点が挙げられる32)。 短距離利用であるため自動車による移動時間が短くなることから観光客が支払う利用料金を低減できる 観光客による車両占有時間が短縮でき、必要な車両数が削減できる 観光スポットで停車している車両数を減少させることができ、駐車場空間を縮小できる 一方で、観光地におけるカーシェアリング事業では、既に展開しているガソリン乗用車にとって、EVシェアリング事業の展開によって形成する競合関係があるため、車両の競合関係を考慮した研究蓄積は少なく、特に車両の違いに着目した既往研究が見当たらない。今後、カーシェアリング事業をさらに推進するため、車両の違いを考慮したカーシェアリングの利用意向を把握することが不可欠である。そこで、本章は地方部観光地におけるカーシェアリング事業を展開するための知見を得るため、大都市に居住している一般市民(免許保有者)を対象としたアンケート調査の実施を通じて、超小型EV、乗用車型EV、ガソリン乗用車それぞれの利用意向に影響を与える要因を把握することを目的とする。 3-2 調査方法 本研究は調査対象を絞り込むため、下記の条件を設ける。本研究は調査会社の2社からの見積書を比較したところ、楽天インサイト株式会社に調査業務を委託し、アンケート調査をWEBアンケートの形で実施した。具体的、調査会社は保有しているモニター(10,000名) 32) 井田直人, 鈴木裕二, 田村亨. 地方部観光地へのカーシェアリング導入評価モデルの構築, 第40回土木計画学研究発表会, 2009.
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