6 からの転換効果も期待できること、autolib’は業務目的トリップに対する潜在的な有効性も持ちあわせていることが分かる。その後、安藤ら12)はパリ市のautolib’を対象とし、カーシェアリングの利用実態、及び市民の交通行動と意識に与える影響を把握するため、パリ市での2か年にわたるパネル調査を実施した。その結果、One-way+乗捨てというサービス形態は市民の視認性と利便性が高く、マイカー利用の削減と公共交通の利用促進といった、所期の目的を十分に達成できることが分かる。須永ら13)は埼玉市で実施したアンケート結果及び3種類の実証実験結果に基づき、超小型モビリティ(Honda MC-beta)を用いた居住地側でのカーシェアリングの活用可能性を検証した。その結果、大都市圏郊外部の居住地では、買い物等の近距離移動目的を中心に、各曜日・時間帯に分散して超小型カーシェアリングの利用がなされたことを明らかにした。「電動」に関しては環境へのやさしさや、ガソリンを入れて返さなくて済み便利なこと、「小型」の車両が駐車場不足の改善につながることが分かる。 2-1-2 海外研究文献の紹介 EVのシェアリング及びEVの普及方策に関する海外の最新研究文献を調査した結果を下記のように整理する。 Wangら14)はEVのシェアリングシステムの効率的な運営や新たなビジネスモデル拡張に資する知見を得るため、中国上海を対象地域として、一般市民がEVシェアリングへの利用嗜好や意識を把握した。その結果、EVシェアリングの利用者は、男性、18~30年齢階層、公共交通(地下鉄やバス)を利用している方であることや、EVシェアリングの受容最大料金、職業、個人月給が中立のスタンスを持っている利用者にとって、シェアリングの利用嗜好に影響を与えていることが分かる。Jan Schlüterら15)はEVのシェアリング利用経験がEVに関する技術に対する受容性を向上し、市場シェアを増大する効果があることを検証した。その結果、都市部に居住している移動性が高い市民がEVに対する受容性は高く、特に従来のカーシェアリングからEVのシェアリングに転換することが挙げられることが分かる。Wangら16)はEVを普及させるインセンティブ施策に加え、社会経済要因について、世界諸国(30か国)の最新動向を整理した。その結果、充電ステーションの密度、ガソリン単価、道路利用優先権はEVの市場シェアを影響していることや、金銭的なインセンティブがEV 12) 安藤章, 山本俊行, 森川高行. 路上乗り捨て型EVカーシェアリングが市民意識と交通行動に及ぼす影響分析 -パリ市・autolib'を例として-, 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集, Vol.48, No.3, 2013. 13) 須永大介, 青野貞康, 松本浩和, 山崎静一郎, 久保田尚. 大都市圏郊外部における超小型モビリティを用いた居住地カーシェアリングの導入可能性に関する研究, 土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.73, No.5 (土木計画学研究・論文集第34巻), I_857-I_868, 2017. 14) Wang, N. and Yan, R.L. Research on consumers’ use willingness and opinions of electric vehicle sharing: An empirical study in Shanghai, Sustainability, Vol.8, No.7, 2016. 15) Schlüter, J. and Weyer, J. Car sharing as a means to raise acceptance of electric vehicles: An empirical study on regime change in automobility, Transportation Research Part F, Vol. 60, 185-210, 2019. 16) Wang, N., Tang, L.H. and Pan, H.Z. A global comparison and assessment of incentive policy on electric vehicle promotion, Sustainable Cities and Society, Vol. 44, 597-603, 2019.
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