電気自動車シェアリングの利用意識に影響を及ぼす要因分析
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5 その導入経緯について、需要予測と利用促進を中心に紹介するとともに、その課題を整理した。その結果、導入後1年半後の加入者数とほぼ同じ水準であり、行動意図法分析手法の妥当性が検証された。また、体育の授業を介した利用促進策は、バスの利用促進等で成功してきた方法であるにも関わらず期待された結果とならなかったことが分かる。安江ら7)はカーシェアリングの更なる普及・利用促進に向けて、会員と非会員との環境意識や自動車保有意識の差異及びサービス変化に対する感度を把握するためのWEBアンケート調査を実施した。その結果、会員と非会員で自動車保有意識に差がみられ、カーシェアリングの利便性を高めることで更なる普及の可能性があること、乗り捨て方式やEVの導入に対して利用意向が高く、利用促進に効果的であることが分かる。川尻ら8)は名古屋市で事業展開されているカーシェアリングの利用実態を把握するため、運営管理データを分析した。その結果、名古屋では、カーシェアリングは男女で利用パターンが異なること、利用直前の予約が多いこと、私事目的での利用が最も多いこと等を明らかにした。保持ら9)は都市郊外団地であるUR(独立行政法人都市再生機構の略語)男山団地を対象に、カーシェアリングへの乗換が可能な自家用車の利用状況を明らかにするため、①利用意向、②利用状況からみた乗換可能自家用車調査等を実施した。その結果、カーシェアへ乗換の意向がある世帯の利用に向けた条件として、コストのほかに、カーシェア車両の配置、将来の廃車が挙げられた。また、家族構成別にみると、主に中・高年の世帯において、乗換の意向があり、使用時間が少ない自家用車が保有されていたことが分かる。石井10)はベルギーのゲント市で展開されているカーシェアリングを1年間利用し、その利便性を明らかにした。また、栃木県宇都宮市で展開されているカーシェアリングと比較・検討し、日本での発展の可能性を探ろうと試みた。その結果、ベルギーと日本での両者のサービス内容はよく似ており、利便性については日本のカーシェアリングもベルギーのものに引けを取らない。一方で、これは客観的なデータを取るような調査はできなかったが、実際の普及度はベルギーの方がはるかに先行していると感じた。環境や資源の有効活用を考えるとカーシェアリングは非常に有効な仕組みであることが分かる。 安藤ら11)はEUの事例として、autolib’(パリ市)とcar2go(アムステルダム市)の事業モデルを調査し、日本国のカーシェアリングの事業に関する知見を得るため、同事業スキームを市民目線から評価することで、同事業スキームの有効性を検証した。その結果、EUでの事業モデルは、one-way型、EV活用、そして、路上空間活用(路上空間でのデポ整備)を組み合わせた先進的な官民連携事業スキームが参考できること、自動車ヘピーユーザー 7) 安江勇弥, 金森亮, 山本俊行, 森川高行. カーシェアリング会員特性と利用意向に関する分析, 土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.69, No.5 (土木計画学研究・論文集第30巻), I_761-I_770, 2013. 8) 河尻陽子, 金森亮, 山本俊行, 森川高行. 運営管理データを用いたカーシェアリングの利用実態分析, 土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.70, No.5 (土木計画学研究・論文集第31巻), I_487-I_500, 2014. 9) 保持尚志, 片岡由香, 倉知徹, 江川直樹. 公的賃貸住宅団地におけるカーシェアリング導入による駐車場用地の転用, 日本建築学会計画系論文集, Vol.80, No.718, 2861-2867, 2015. 10) 石井誠. ベルギーのカーシェアリング事情, 宇都宮共和大学都市経済研究年報, Vol.16, 153-167, 2016. 11) 安藤章, 山本俊行, 森川高行. EU諸国のEVカーシェアリングの最新動向と市民の利用意向に関する分析,公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集, Vol.47, No.3, 2012.

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