電気自動車シェアリングの利用意識に影響を及ぼす要因分析
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4 2. 既往研究の整理及び本研究の位置づけ 本章では、カーシェアリングに関する既往研究、EV市場に関する最新動向、EVシェアリングの最新動向を説明した上、本研究の位置づけを明示する。 2-1 カーシェアリングに関する既往研究 2-1-1 国内研究文献の紹介 ガソリン車やEVのシェアリングに関する国内既往研究を調査した結果を下記のように整理する。 大田ら2)はカーシェアリングの加入促進に対する実証的知見を得るため、相模原市において、住民や事業所を対象としたワンショットTFP(トラベル・フィードバック・プログラムの略語)を実施した。その結果、ワンショットTFPによるカーシェアリングについての理解の大幅な増進、カーシェアリングへの関心の促進といった効果が確認されたとともに、カーシェアリング普及促進に資する基礎的知見を得た。田口ら3)は秋田市の一部地域を対象に、自家用車の利用状況を踏まえ、カーシェアリング利用の影響要因を多元的に分析し、導入の可能性を検証した。その結果、カーシェアリングの導入可能性が高い条件は、駅周辺のマンション等の集合住宅に居住すること、自家用車を複数台所有し、使用頻度が低いこと、公共交通が便利と感じていること、そして、近所での買物が可能であることが分かる。矢野ら4)は、カーシェアリングへの加入が交通行動、とりわけ自動車利用距離の削減に及ぼす影響を把握するため、京都市内のカーシェアリング会員を対象に実施したアンケート調査結果を分析した。その結果、カーシェアリングに加入することで自家用車を手放した回答者の自動車利用距離は、加入後に約8割減少していることが明らかとなった。さらに、加入後に自動車利用距離が増加している回答者を含めた回答者全員の自動車利用距離の合計でも、約3割減少していたことが分かる。石村ら5)は地方都市である松山市におけるカーシェアリング普及に必要な基礎情報を得るため、潜在需要分析を実施した。その結果、パーソントリップ調査を用いた1日当たりの分析では、松山市の約7割の自動車が削減可能で、特に都市周辺地区のセカンドカーは削減可能性が高く、プローブパーソン調査を用いた1週間当たりでの分析では、約7割の車両が削減可能であることが明らかになった。 谷口6)はカーシェアリングを大規模事業所である大学に導入した筑波大学を事例として、 2) 太田裕之, 藤井聡, 遠藤弘太郎, 土居厚司. 人々の心理要因に着目したカーシェアリングの効果的な加入促進に対する研究, 土木計画学研究・論文集 Vol.26, No.5, 2009. 3) 田口秀男, 木村一裕, 日野智, 木内瞳. 地方都市におけるカーシェアリング利用の影響要因と導入可能性に関する研究 -秋田市を事例として-, (社) 日本都市計画学会 都市計画論文集, No.44-3, 2009. 4) 矢野晋哉, 高山光正, 仲尾謙二, 藤井聡. カーシェアリングへの加入が交通行動に及ぼす影響分析, 土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.67, No.5 (土木計画学研究・論文集第28巻), I_611-I_616, 2011. 5) 石村龍則, 倉内慎也, 萩尾龍彦. 自動車保有・利用コストに着目した松山都市圏におけるカーシェアリングの潜在需要分析, 土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.67, No.5 (土木計画学研究・論文集第28巻), I_665-I_671, 2011. 6) 谷口綾子. 大学におけるカーシェアリング・システム導入時の潜在需要予測と利用促進, 土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.67, No.5 (土木計画学研究・論文集第28巻), I_1103-I_1112, 2011.

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