豊田市における自動運転関連技術の社会実装を支援する基礎的研究
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344-5.自動運転等の必要環境整備量分析のまとめ ここでは、中山間地における自動運転車の導入に向けた自動運転対応道路の整備優先順位の設定手法を提案し、愛知県豊田市旭地区の実際の道路網と人口分布を用いて自動運転車の路線圏人口と、自動運転対応道路の整備延⾧の関係を分析した。 ここでの分析で得られた知見を以下に示す。 中山間地である旭地区で全居住者が利用できる自動運転対応道路を整備した場合、整備延⾧あたりの路線圏人口は最大で18.4人/kmである。この値は都市部を含む地域である豊田市全域や政令市の名古屋市と比較して一桁小さい。都市部と中山間地との条件の違いを示した。 道路整備延⾧は副拠点の箇所数が多いほど短くなる傾向がある。ただし、路線圏人口を全人口ではなく一部に限定した場合、つまり一度に整備できる延⾧に制約がある場合には、副拠点間を結ぶための道路整備を優先するために路線圏人口が少なくなる可能性がある。そのため、可能となる整備量の制約を考慮した拠点設定が必要である。 優先度として距離あたり利用可能人口を用いるほうが整備量が少なくなる傾向があるが、整備延⾧に制約がある場合は、路線圏人口が少なくなる可能性がある。このことから、整備量の制約を考慮した優先度指標の使い分けの必要性が示唆された。 整備延⾧あたりの路線圏人口は、一定の整備延⾧を越えると収束する傾向を確認した。目標とする路線圏人口を検討する際のひとつの目安として活用できる可能性がある。 今後の課題として、次のことがある。まず、本稿では、すべての道路を候補としているが、車道の幅員や沿道施設の立地、利用者の集約可能性なども考慮した経路探索が考えられる。次に、最短経路のみならず経路の共通利用の考慮、最適化手法の導入により、より効率的な道路整備が期待できる。また、本稿の対象地域が中山間地であることからハブアンドスポーク型の道路網を想定したが、拠点の設定方法を工夫することで、格子型や放射・環状型の道路網を検討することも考えられる。さらに、本稿では単純に整備延⾧のみについて評価したが、導入する自動運転車の運用方法(自家用車とするのか、SAVsのような共同利用用の車とするのか)、必要となる車両数などの考慮が挙げられる。今後はこれらの観点も加えた分析を進めることが求められる。

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