36 ない。また都市規模による差が生じた「公営住宅戸数」は、背景に都市規模による社会動態の違いの影響があるのかもしれない(すなわち、中核市や特例市のような都市で公営住宅戸数が多いということは、人口増加の需要に併せた整備であり、比較的若い世代の方々が対象となっている可能性が予想される。他方で、市のような規模の都市では、むしろ人口が減少もしくは横ばいとなる中で公営住宅は高齢者が対象となっている可能性が予想される、など)が、理由の特定については分析をより深めていくことが不可欠であろう。 「前期高齢者労働力率」で「中核市・特例市及び市双方で有意となっていたのは、「人口集中地区面積」(負の相関)、「労働力率_女_非高齢」(正の相関)であった。人口集中地区面積は人口比での値であり、この値が大きいということは都市部の広域化が進んでいるにもかかわらず、人口が少ない、低密な都市ということである。このような都市では一般に様々な都市機能の撤退による雇用環境の悪化が進展しているものと予想され、それによる若年層の流出も相まって地域によっては急速な高齢化が進展しているものと推察される。そもそもの高齢者の多さに加え、就業の場や機会が少ないといったことがこのような都市での前期高齢者の労働力率を押し下げてしまっているのではないかと予想する。この点を踏まえるならば、都市のコンパクト化は、高齢者の就労を支える上でも意義高いものであるといえよう。女性の非高齢者の労働力率が高い都市というのは、女性が働きやすい環境が整っている、もしくはそのような文化が根付いている都市であろう。そのような都市では、そもそも雇用の口が多く提供されている可能性も高いが、そもそも働くという事に対する抵抗感が少ないという可能性もある。追加的な調査も含めた詳細な分析は必要ではあるが、そのような環境や雰囲気の醸成も高齢者の労働力率を高める上では考慮すべきものなのかもしれない。
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