超高齢社会における社会基盤の在り方に関する研究~高齢者の財務的効率・生きがいに着眼して~
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32 表 5-1 所得、医療、生きがいと活動量の関係(重回帰分析) 所得 医療費 生きがい(ikigai-9) 給与・ 事業所得(可処分所得) (1年間、万円) 窓口支払い額 (1年間、万円) 全体 (総得点) 下位尺度1: 生活・人生の楽天的肯定感 下位尺度2: 未来への積極・肯定姿勢 下位尺度3: 自己存在の 意味認識 推定値 判定 推定値 判定 推定値 判定 推定値 判定 推定値 判定 推定値 判定 定数項 -49.14 + 9.01 *** 16.17 *** 6.66 *** 5.11 *** 4.41 *** 就労 100.29 *** 0.13 0.40 ** -0.05 0.22 *** 0.22 *** 近所づきあい 2.76 -0.26 1.07 *** 0.34 *** 0.24 * 0.50 *** 友人との交流 -2.59 -0.84 1.53 *** 0.45 *** 0.49 *** 0.60 *** 趣味・習い事 -9.34 0.42 1.09 *** 0.26 *** 0.56 *** 0.26 *** 散歩・軽い体操 -15.42 * -0.07 0.84 *** 0.31 *** 0.34 *** 0.19 * 運動・スポーツ 19.77 ** -0.07 0.55 ** 0.15 + 0.17 * 0.23 ** 調整済み決定係数 0.25 -0.001 0.21 0.13 0.18 0.18 *** p < 0.001, ** p < 0.01, * p < 0.05, + p < 0.1 5-2-2.個人の活動量に与える要因 以上のように、個人の活動量は、特に生きがいと強く結びつき、所得とも関連性がみられた一方、医療費との関係性はみられないといった傾向が確認できた。収入における「散歩・軽い体操」を除いて、これらの活動は、その活動量が多いほど、それぞれの生きがいや収入を高める傾向にあることがわかった。では、これらの活動量は、どのような要因によって左右するのであろうか。そして、その要因の中に、高齢者の置かれている「環境」の影響はあるのだろうか。 この傾向についてみたのが表5-2である。表5-2では、順序ロジスティック回帰分析を用い、個人の活動量が属性や健康状態といった個人の特性、および居住地やその地域にある施設の状況といた個人の環境からどの程度の影響を受けているかを分析した。変数選択には、ステップワイズ(変数増減、AIC)を用いた。 まず、個人の特性に関するものの結果を俯瞰すると、「性別(男性ダミー)」や「年齢」、「主観的健康度」、「社会参加能力」といったものが比較的多様な活動量に影響を与える要因となっていることがわかる。男性は女性に比べ「就労」、「散歩・軽い体操」の活動量が多い一方、「近所づきあい」「友人との交流」「趣味・習い事」の活動量が少ないことがわかる。また、加齢に伴い「就労」の活動量が減少し、それ以外の活動量が多くなることもわかる。「主観的健康状態の悪さ」はすべての活動に影響しており、悪くなるほど、活動量が減少する傾向にある。「社会参加能力」を含め、多くの日常生活能力の高さは、活動量の多さに比例しているが、唯一、「就労」の活動量に対して、新機器利用能力のみがマイナスに影響をしている。この原因については詳しい分析が必要だが、例えば、60歳を超えて活動的に働いている方の多くは管理職などの経験者が多いことも予想され、自身で新たな機器を使用する必要性がそもそも低かったのではないかといったことも考えられる。 ここから、個人の環境に関するものについて詳しくみていく。まず、普段の交通手段をみると、「電車(ダミー)」、「車(自身で運転)」、「自転車」、「徒歩」が複数の活動量に影響を与えていることがわかる。このうち、「電車」、「車(自身で運転)」、「自転車」が普段の交通手段である場合、活動量が多くなっている傾向がうかがえる。他方で、

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