超高齢社会における社会基盤の在り方に関する研究~高齢者の財務的効率・生きがいに着眼して~
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22 んでいる可能性も予想される。そのため、このような健康福祉をテーマに掲げている都市からみた傾向も併せて整理することとした。具体的には、健康都市連合日本支部25に所属する会員都市、並びに首長がスマートウェルネスシティ首長研究会26の正会員である都市における傾向を整理することとした。 分析の考え方 本研究では、個人の「財務的効率」を、医療費などの健康関連費用の低減や就労による経済活動を通じた所得の増加によって規定されるものと考える。公表されるデータにおいて、これらを直接的に表現できるようなものは見当たらず、よって、便宜的に以下のような代替指標による分析を通じて考察を試みることとした。 健康関連費用については、市町村国民健康保険の医療費を採用した。この理由として、厚生労働省の調査27から65歳から74歳の前期高齢者が被保険者数の43.2%を占めるなど、比較的活動的と予想される前期高齢者の医療費の実態をよく反映していると予想できることによる。なお、2008年に発足した後期高齢者医療制度による給付データの活用も検討したが、当該制度が75歳以上の後期高齢者を対象としていることから継続就労の可能性を判断していくという観点からはやや実態と離れた群のデータではないかと予想したこと、後述の医療費の変化を分析する際に過去データ(2010年)が一般に公表されていなかったことより、本分析では対象としなかった。分析に際しては、単年の医療費とともに、過去からの医療費の変化という点からも分析を行った。ここでは、他のデータとの整合性を踏まえて2010年から2015年にかけての変化割合とした。 就労による経済活動を通じた所得については、高齢者の労働力率を採用した。これは、労働は経済活動であり、一般に個人に対して対価としての収入をもたらす行いであることによる。なお、ここで対象とする高齢者は前期高齢者とし、医療費(市町村国民健康保険)との整合性を図っている。労働力率は以下のように表現される。 労働力率 = 労働力人口 / 総人口(労働状態不詳を除く)*100 ここで扱う労働力人口は、完全失業者も含んでいる。完全失業者はあくまで調査期間中に収入がなかったということであり、積極的に就業しようとしていることからも、継続就労という点に着眼している本研究の対象に合致しており、かつ潜在的な所得増加の可能性のある群であると予想したことによる。なお、本変数は、あくまで労働の実態を表現する 25 健康都市連合日本支部,http://japanchapter.alliance-healthycities.com/ (最終閲覧2020.3.31) 26 スマートウェルネスシティ,http://www.swc.jp/ (最終閲覧2020.3.31) 27 厚生労働省保険局「国民健康保険実態調査 平成30年度」,2020.1

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