21 4.都市の社会基盤が高齢者の財務的効率に与える影響のマクロ分析 本章では、都市の特定の社会基盤の整備状況が、高齢者の「財務的効率」に影響を与える影響について巨視的(マクロ的)観点から分析する。 4-1.方法 4-1-1.対象 分析の対象は、前章同様、全国の市区町村とする。これは、多様なデータセットが公表されており、印南21や罇22、谷口ら23の成果からも少なくとも医療費に関して市区町村の格差は小さくなく、傾向を理解しやすいと考えたためである。使用するデータについて、表4-1に示す。先の分析で参照した内閣府「経済・財政と暮らしの指標「見える化」データベース」を中心に、厚生労働省の「医療費の地域差分析」、国勢調査から収集している。 4-1-2.分析方法 分析の視点 全国には、2018年10月1日現在で1,741の市町村(特別区を含む)がある。本分析では高齢化が進展した都市に住まう高齢者の財務効率に着眼をしていることから、高齢化率の違がひとつの視点となる。他方で、市町村単位でみた場合に、都市の規模や特性には大きな差があり、その影響を踏まえたかたちで分析を進めることの重要性も高いだろう。我が国における都市の分類には、多くの研究蓄積24があるが、本研究では、地方自治法における区分で一般的に用いられる分類でもあり、基礎自治体の権限範囲等からその特性に類似性も予想される行政区分による分類を採用する。具体的には、市町村及び特別区である。なお、市においては、移譲される権限に違いのある政令指定都市(以下、指定市)、中核市及び、2014年の地方自治法改正時点で特例市の指定を受けており、現時点で中核市への移行をしていない施行時特例市(以下、特例市)に分けて分析を進めることとした。ところで、近年、少なくない都市で、健康福祉を都市の方針に掲げ、様々な政策を進めるところがみられる。このような都市では、他の都市に比べ健康福祉のための社会基盤整備が進 21 印南一路:医療費の決定構造と地域格差,医療と社会,7-3,1997,pp.53-82 22 罇淳子:老人医療費の都道府県格差に及ぼす要因の検討―老人医療費の多寡によるグループ分けからみた分析―,新潟青陵学会誌 第6巻第1号,2013,pp.1-11 23 谷口力夫,藤原佳典,渡部月子,長谷川昭弘,高林幸司,星亘二:高齢者入院医療費の市区町村格差に関する研究--我が国における先行研究の文献的総括,総合都市研究 (74), 65-76, 2001-03 24 例えば、以下の論文が詳しい。山本雄三,高見具広,高橋陽子:統計指標に基づく市町村分類の試み,JILPT Discussion Paper 18-05,2018.3
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